2020年12月 3日 (木)

【第657回】 「支える」飯田 小次郎 (地歴・公民)

 私は遊学館高校から巣立った卒業生の一人です。あれから4年の月日が流れ、今、教員という立場で母校に帰ってくることができました。

 私が此処、遊学館高校で過ごした3年間という時間は人生の中で最も濃密な時間でした。また、私自身の人生において何にも代えることのできないかけがえのない財産となっており、遊学館高校で過ごした日々に誇りを持っています。

 今、教員という立場に立ち、生徒を見ていると私自身の学生生活が思い出されます。クラスメイトと先生の話に耳を傾けた授業、休み時間に笑顔が溢れた教室、学校全体で盛り上がった体育祭などの学校行事、そして、毎日必死になって打ち込んだ部活動。4年が経った今でも鮮明に思い出されます。それと同時にあれだけの濃密な時間を過ごすことができたのは多くの方々の「支え」があったからなのだと、つくづく実感しています。

 私は現在、硬式野球部のコーチをしており、生徒とともに日本一を目標に、日々練習に打ち込んでいます。「1年目で結果を出す」それが今年の私の目標でした。しかし、現実は甘くなく、私の未熟さ、脆さが多く出た1年となり、とても悔しい気持ちでいっぱいです。そこで自分自身を見つめ直し、自分に足りないところは何なのかを考えました。そして私が出した答えは「支える」力でした。生徒が悩んでいるとき、苦しいときに支えることができたか。嬉しいとき、楽しいとき一緒になって喜べたか。成長の手助けをできたか。まだまだです。

 遊学館高校で過ごした学生時代をよく振り返ってみると、冒頭でも書きましたが学校生活において部活動の先生、クラスを持っていただいた担任の先生、私自身に携わってくださったすべての先生方の「支え」のおかげで充実した学生時代を過ごすことができました。

 現代社会は、新型コロナウイルスの影響により新しい生活様式を強いられ、学生の部活動では甲子園大会の中止やインターハイの中止など、未だに混乱が続いています。また、高度情報化などにより生きやすくもあり、生きにくくもある時代に我々は直面しています。しかし、そんな現代社会に私たちは対応し、変わり続け、現実を受け入れて生きていかなくてはいけません。そんな現代社会を生きる高校生は、不安や焦り、恐怖など様々な感情が入り乱れていると思います。このような現代社会で今度は私が、満開の桜に囲まれた体育館から多くの生徒が「遊学館高校に来てよかった」と言い、巣立っていけるよう、生徒と向き合い「支える」ことのできる教員になりたいと思います。

2020年11月26日 (木)

【第656回】 「正しい知識」A. K. (理科)

 昔々、私がまだ小学生だったころのことでした。
 冷たい水が入ったガラスのコップの外側に水滴がつくのはなぜなのか?疑問に思ったので、ある大人に聞いてみました。すると、その人は、「内側に入っている水が、ガラスからしみ出てくるから」と答えました。実は、この答えは間違いで、正しくは(簡単に言うと)、「空気中に含まれている気体の水蒸気が冷たいコップの表面で液体の水に凝縮するから」です。
 私は、中学3年生で受けた高校入試のための模試で同じ問題を不正解となり、ようやく正しい知識にたどり着きました。この体験は、先ほどの1回だけではとどまらず、自分が思っていたことが実は間違いだったり、勘違いしていたり、思い込みだったり、ということが高校や大学で勉強していくうちに何度もありました。
 私は、生徒の皆さんから何か質問を受けたとき、「時間をください」と言って即答しないこともしばしばあります。特に、自分が大学で専攻していなかった理科の質問に対しては、憶測で物を言うことで間違った知識を教えるわけにはいかないと、慎重になるからです。だから、少し待ってくれるとうれしいです。
 また、最近は、ネットで簡単に知らないことも検索できるようになりました。しかし、ネットに書いてあることが全て正しいとは限らず、自分で正しい知識を選び取る力が必要になっています。そのためには、片寄った勉強だけしていてはだめで、幅広い分野の勉強が必要になってきます。高校は、幅広い知識を得るのに、最高のところだと思います。
 ということで、まずは、目の前に迫っている期末試験では、すべての教科を全力でがんばりましょう!それが深く心に沈んでいって、将来、何かの拍子に出てくるといいですね。

2020年11月19日 (木)

【第655回】 「今年度チャレンジしたこと」A. K. (保健体育)

 2020年3月から新型コロナウイルスの影響により、多くの競技で大会開催が中止になりました。女子卓球部の前監督から私に引き継ぎ7年から8年経ちますが、このような経験は初めてでした。特に3年生にとっては、全国大会が中止となったため、非常に悔しかったと思います。私自身、「今後も大会中止が続くのか?」という不安な気持ちでした。
 このような状況のなか、コロナに負けないために新しい取り組みをしようと以下の内容を考えました。

① 練習場にipadとwifiの設置

新型コロナの自粛中に練習場のインターネット環境などを整えました。Zoomを活用し、実業団選手や他チームの指導者からアドバイスをもらっています。生徒は、休憩時間中にトップ選手の動画を見てイメージを膨らまし、練習に活かしています!

② 卓球の研究

今年度から「自分の好きなテーマで卓球の研究をしよう!」と勝手に私が言って、始まりました。ただ、卓球に打ち込むだけでなく、論理的・科学的な捉え方を学習させることで競技にも活かせるだろうと考えました。現在、生徒はテーマを決めている段階ですが、「卓球のメーカーによって、ボールの飛び方がどのように変わるか」などおもしろいテーマを考えています。研究内容にもよりますが、卓球の研究をしている大学や卓球メーカーの企業と連携し、共同研究ができるようになれば!!と考えています。

今年度は、この2つにチャレンジしました。さらに発展させるために、取り組んでいきたいと思います。新型コロナに負けず、来年度も新しいことにチャレンジしたいと思います!

みなさんも何かチャレンジしてみませんか!

2020年11月12日 (木)

【第654回】 「ワクワクしよう!」渡辺 祐徳 (英語)

高校生のみんな,毎日ワクワクしているか?
突然そう聞かれても,なんと答えればいいか,迷うかもしれない。

若い君たちは,自分のなりたいものや,やりたいことを決めて頑張れば,実現できる可能性がある。
私のようなおじさんでもワクワクすることがあるのだから(笑),君たちにはその何倍もワクワクを感じてほしい。

「高校生には,自分の進みたい方向を見つけ,それを実現する可能性がある。
そのために,今できること,やるべきことをしっかりとやってほしい。」
このようなことを,授業やホームルームでよく言っている。
一人ひとりが将来にわくわくしながら,高校生活を送ってほしいと思っている。

先日,1年生を対象として,コース選択調査を行った。
2年生になると,卒業後の進路希望に合わせたコースごとにクラスが分かれる。
私のクラスでは,調査用紙の提出期限まで迷った生徒もいたが,それぞれが自分の将来について考えた。

みんな,来年のクラスや卒業後の進路にワクワクしているだろうか。
将来について考えるとき,ワクワクと同時に,不安も感じるだろう。
迷ったり,考えが浮かばない時は不安のほうが大きいかもしれない。
しかし,不安をワクワクに変えるのは,自分だ。
迷ったら誰かに相談したり,調べたりしながら,進路を実現するように努力しよう。
頑張れば必ずいいことがあるものだ

私自身,クラスの生徒たちの将来にワクワクしている。
「看護師を目指す〇〇は,どの学校に進むのかな。いい看護師になってほしい。」
「□□は就職希望。真面目で勉強もできるから,会社でも頼られる人になるだろうな。」
「☆☆はクラスで一番のあわてんぼうだが,得意のスポーツで推薦されて進学できるだろう。」

思い返せば,今年度は新入生を迎えてすぐの4月10日,長い休校に入ってしまった。
あまりにも異例のスタートに,生徒たちは不安のほうが大きかっただろう。
担任の私としても,十分にクラスの名前と顔を覚える機会がない悔しさを覚えた。
電話やClassiで連絡しなければならない不便さもあった。
しかし,それでも一人ひとりの状況が確認できた時は,気持ちが明るくなった。
いつか教室でみんなと顔を合わせるのを楽しみに,ワクワクしたものだ。

「このクラスをいいクラスにしたい」この思いも私のワクワクの一つだ。
そしてまがりなりにも長く教師を務めてきた,自分への挑戦でもある。
幸いにも,生徒たちはクラスを大切に思ってくれているようだ。私の話もよく聞いてくれる。
なによりも,少しずつ変化し,成長しているのがわかる。
本当にワクワクさせてくれる生徒たちである。

最後に蛇足だが,そろそろ自分も,次の将来を考える時期になった。
いつか教師を引退する日が来たら,新しいスタートをしようと思っている。
具体的に何をするかなど決めているわけではない。
ただ,「スポーツカーに乗れるような人生」を目指そうと思っている。
それは冗談だが,そんなことを言うことで自分を振るい立たせ,ワクワクしている。

2020年11月 5日 (木)

【第653回】 「ラウンド・キャラクターであるように」和田 康一郎 (国語) 

 小説の登場人物を、イギリスの作家E・M・フォスターは2種類に分類しました。フラット・キャラクターとラウンド・キャラクターです。前者は小説中で変化しない人物、後者は変化を遂げる人物です。人間的成長を遂げる人物も、後者に当たります。
 成長する人物の代表例は、太宰治「走れメロス」のメロスです。えっ、フラット・キャラクターでは?と思った方もいるかもしれません。そういう人は、中学校の教科書等で読み返してみましょう。
 メロスは最初は優れた人物ではありません。王に怒るとその足で城に侵入し、捕まって死刑を命じられます。そうなって初めて、妹を結婚させるまで死ぬわけにはいかないと思い当たり、親友を身代わりに人質にして、村に向かいます。この辺りのメロスは、中学生にも馬鹿にされるような、自称の勇者に過ぎません。
 ところが、間に合うか否かわからない状態で、必死に駆け続けるうちに、メロスは変わります。結果は問題でなく、人の信頼に応えるべく最大限の努力を続けることが尊いと悟るに至ります。結末では、語り手がメロスを「勇者」と呼んでいます。自称の勇者が本物の「勇者」と認められるまでに、人間的に成長するのです。
 「走れメロス」をクサい友情物語と貶める向きがありますが、現在は同意する人は少ないでしょう。(むしろ、人の成長が分からない人だと、白い眼で見られるかもしれません。)その理由は、日本でオリンピックが行われる予定だからです。結果は分からないけれども、応援に応えるべく最大限の努力をしているアスリートが、数えきれないほどいて、現在でも各地で頑張っていることでしょう。メロスの激走は、そんなアスリートたちの努力と重ね合わせて読むこともできると思います。
 遊学館で学ぶ皆さんが、将来人間的に成長していける、ラウンド・キャラクターであることを、祈っております。