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2025年12月25日 (木)

【第919回】「【遊学講座】34年の歴史に刻まれた、ある生徒の「気づき」 」中川 都 (国語)

 本校には、全国的にも珍しい独自の授業があります。毎週土曜日に行われる「遊学講座」です。 資格取得、外国語、趣味・教養、そしてスポーツ。多彩な講座には、校外から第一線で活躍される専門の講師の方々もお招きし、生徒たちは自らの興味関心に従って「自分だけの学び」を選択してきました。その遊学講座が、34年目を迎えた今年度をもって、その歴史に幕を閉じることとなりました。
「遊学講座」では、毎年最後に生徒に感想文を書いてもらいますが、その中で「けん玉講座」を受講している生徒が語ってくれた言葉が印象に残りました。


■ 「誰より上手か」よりも大切なこと

 その生徒は、もともと「けん玉1級」の腕前で、講座の始めの頃は余裕を持って取り組むことができていたようです。しかし、講師の先生の鮮やかな技、そしてその向き合い方に触れる中で、彼はこう思ったようです。
「自分は1級を持っていて、皆より上手だと思っていた。でも、先生の技を見て気づいたんです。大事なのは誰より上手いかではなくて、自分が少しずつ上手くなっていくことなんだ、って」
この言葉に、私は教育の原点を見た気がしました。 他人と競うための技術ではなく、昨日の自分を超えていく喜び。その生徒は、けん玉を通して「自分を育てる」という本当の意味を見つけ出していました。
この生徒のように、教科書のない教室だからこそ得られた学びが、他の60の講座にも溢れています。 資格取得に挑む者、伝統文化に触れる者、スポーツに汗を流す者。講師の先生方の背中から学んだのは、専門知識だけでなく、物事に向き合う「姿勢」そのものでした。


■ 34年間の感謝を込めて

 土曜日の2時間。 そこには、ただ純粋に自分の「好き」や「向上心」と向き合う、豊かで贅沢な時間が流れていました。この34年間で、たくさんの生徒が、彼のように「大切なこと」に気づき、卒業していったと思います。今年度で遊学講座という形は幕を閉じますが、生徒たちが手にした「気づき」は、これからの長い人生を支える確かな力になると信じています。

 これまで本校の教育に情熱を注いでくださった講師の皆様、そして素晴らしい学びを見せてくれた生徒たちに、改めて感謝を伝えます。本当にありがとうございます。