2013年6月 6日 (木)

【第282回】 「倫理」という授業中村 裕行 (地歴・公民)

 私は、4月初めの授業で、よく生徒達にこんな質問をします。

 「サザエさんの家を訪ねてきたお客様からいただいたお土産をあけてみると、イチゴのショートケーキが5つ入っていました。サザエさん一家は、サザエ(本人)、波平(父)、舟(母)、マスオ(夫)、カツオ(弟)、ワカメ(妹)、タラオ(長男)の7人家族です。さて、ケーキをどのように分けたらよいでしょうか?」

 初めはポカンとしている生徒達も、時間が経つにつれて頭を働かせ始めます。

 ある生徒は、「7分の5ずつ分ければいい」と答えました(数字に強い生徒かな?)。でも、ショートケーキを7分の5ずつ分けるのは大変そうです。また、5つのイチゴはどうするのでしょうか。

 別の生徒は、「ジャンケンで負けた2人が我慢する」と答えました。さらに別の生徒は、「女性や子供は甘いものが好きだから、波平とマスオが我慢すべきだ」と答えました。

 それでも、「カツオにケーキをあと2つ買ってこさせ、みんなで仲良く1つずつ食べる」とか、「大人が我慢して、イクラちゃん(いとこの子)やタマ(飼い猫)にも分けてあげればよい」という珍解答(?)には感心させられました。

 ところで、こんなバカげた質問や答えがとびかう授業とは、何の授業でしょうか?

 正解は、「倫理」です。倫理とは、「人の踏み行うべき道」をさします。 大げさな言い方をすれば、人の生き方や社会の在り方、徳や正義とは何か、などを考える授業です。決して答えは1つでなく、考え方は様々です。

 とかく白黒や○×をはっきりさせたがる中にあって、グレー(灰色)や△のゾーンは大切だと考えます。そこには、1つでは片付けられない色々なグレー、様々な△が存在します。たとえば、人の生き死にもそれぞれの社会(国)が決めていることで、人工授精や中絶の是非、臓器移植や安楽死の是非など、その考え方は様々です。

 マイナーな授業ではありますが、「倫理」は私にとって大切な、そして大好きな授業です。これからも感受性豊かな生徒達から柔軟な発想を引き出し、共に考えていければ幸いです。

2013年5月30日 (木)

【第281回】 「旬」中村 ゆかり (国語)

 「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」と素堂の句にありますが、さわやかな陽光のもと、目にもまぶしい青葉が「旬」の季節を迎えました。京都では秋の紅葉と並んで、床に映った5月のもみじを愛でる門跡もあるほどです。「旬」とは「季節を先取る<はしり>と呼ばれるもの、素材が一番美味しい時期」といった意味があります。<はしり>と呼ばれるものは希少性も値段も高くなりますが、日本ではこの季節の初鰹に代表されるように「初物を食べると75日寿命が伸びる」といわれ「旬」を食する習慣があります。四季に恵まれたこの国は、折に触れて私たちを楽しませてくれる花や食材があり、改めてそうした環境の中で生活できることの「有り難さ」を実感します。

 先日、サッカー界の貴公子デイヴィッド・ベッカム選手が引退を表明しました。まさにサッカー現役選手としての「旬」を終わらせようとしています。スポーツ界にありながら、彼ほど折に触れて世界を賑わした人物はいないのではないでしょうか。髪型、ファッション…職業に直接関わらないプライベートに至るまで。ともあれ第一線で活躍することは並々ならぬ精神力を必要としたことと思われます。そんな貴公子もラストゲームでピッチを去るときに、その目には涙がありました。人は一つの節目に立たされるとき、これまで歩んできた「道」を振り返るとともに、心中には様々な思いを抱くのでしょう。そして苦しかったことも、嬉しかったことも、すばらしい思い出として「一生の宝物」になるのだと思います。

 時はまさに総体・総文目前!一年生は初めての、2年生は昨年の思いを胸に秘めての、3年生は高校生活を総括する一つの節目としての大会や活動になることでしょう。ベッカム選手だけにかかわらず、人間には必ず一線を退く日がやってきます。その時にどんな思いを抱くかは、それぞれの道に「どのように取り組んできたか」にかかっていると思います。10代の一番輝かしい「旬」のときを、力いっぱい謳歌してほしいと思います。
 『 がんばれ遊学生!!』

2013年5月23日 (木)

【第280回】 『コーヒー』N. H. (保健体育)

 皆さんは、コーヒーが医学的に注目されていることをご存知でしょうか。先日、ある民放の健康番組を見ているとコーヒーの成分(カフェイン)ががんの治療に利用され、医師に足の切断を宣告された患者が、カフェインの投与で切断が回避され、術後経過が良好で、がん細胞の切除に成功した症例の報告が放送されました。脳卒中に効果があることは新聞記事で知っていたが、がんの治療に効果があるとは驚きであった。しかも、がん・脳卒中だけではなく、心疾患・糖尿病・肝臓病の予防など生活習慣病に効果があるらしいのです。

 コーヒーは、良くないイメージがありましたが、これは喫煙と一緒にコーヒーを飲むからで、コーヒーそのものは、もともと薬として発見されたものであるらしい。コーヒーは、ドリップやインスタント・缶などがありますが、ミルクや砂糖を入れない“ブラック”で飲む方が効果があるそうです。それと飲む時は、食後ではなく、食前のほうが血糖値の上昇を抑えることも実験で証明されているようです。本当かどうかはわかりませんが、ある年配の女性の顔のシミが薄くなったような気がするという話も聞きました。

 私は、今までコーヒーを愛飲してきましたが、これからも愛飲していきたいと思います。

2013年5月16日 (木)

【第279回】 お洒落とは?中川 都 (国語)

 テレビ朝日の朝の情報番組「やじうまテレビ!」に、『そっと後押し きょうの説法』というコーナーがあります。なかなか人気のコーナーのようですが、私は今年の4月に、初めて見ました。その日は、曹洞宗の亀野哲也ご住職が、「お洒落」という言葉についてお話され、その解説が大変印象に残りました。

 ご住職曰く、日本語の「お洒落」という言葉は、英語に置き換えると、「ファッション」とでも言えますが、この二つの言葉は似たようで、まったく違う意味を持ちます。
「ファッション」は「作る」という意味のラテン語(factio)を語源とし、そのものの本質を覆い隠し、盛って盛って飾り立てるということです。
 反対に、お洒落の「洒(しゃ)」という字は、洗い流すという意味です。飾り気、わざとらしさ、そういうものを全部洗い流し落として、素材の美しさを生かす。これが、お洒落、ということです。
 最後に、ご住職は、内面を磨くことが大事であると、締めくくられていました。
(注:印象に残ったことを、私なりにまとめましたので、実際のテレビ放送とは内容が違うところがあると思います。ご容赦下さい。)

 ところで、先日の国民栄誉賞の表彰式における長嶋監督と松井秀喜さんが着られていたスーツ。お揃いのスーツでした。着ているものに、まず意識がいったのは、「お洒落」という言葉がずっと気になっていたからかもしれません。
 松井さんが長嶋監督にお願いして、お揃いにされたという紺のスーツは、上品なもので、それをお二人は端正に着こなされていました。W受賞の表彰式という晴れの舞台にふさわしく、また、お二人の人柄、そして心身共に精進されてきた軌跡や、絆の強さ、を感じさせました。まさに磨かれた内面がうかがえ、お洒落というのは、こういうことかもしれないなぁと思いました。

 高校時代は、自分を成長させる自分磨きの大切な時期です。
ぜひ、生徒達には、学校生活を充実させ、自分を大いに磨き、制服を「お洒落」に着こなしてほしいと思います。

2013年5月 9日 (木)

【第278回】 ジンクスに挑戦中川 光雄 (保健体育)

 今年、新入部員40名(女子マネージャー含む)を迎えスタートした我が野球部の話です。

 先日から春の北信越地区高等学校野球石川県大会が始まりました。わが野球部は、初戦から準々決勝まで、すべての試合において7回コールド勝ちで、北信越大会の出場権を獲得しました。試合内容は、石川県初の日本一を目指すチームとしては、まだまだ物足りない試合ばかりですが、例年以上に選手達は結果にこだわっています。私を含めた先生方の考えは、この大会を夏の甲子園に向けて、チームの課題を明確にするための大会であり、優勝だけが目的ではないと位置付けています。選手たちは、先生方の考えを理解したうえで、優勝にこだわっています。ここまで結果に、それも優勝にこだわっている理由は何故なのか、主将をはじめ3年生達に話を聞いてみました。するとこんな答えが返ってきました。

 『春の石川県大会を制すると夏の石川県大会を制することが出来ない。過去10年そのことが続いている。高校生のなかではジンクスになっている。このジンクスを打ち破って甲子園出場、県初の全国制覇に挑戦したい。』

 なかなか頼もしい答えが返ってきました。私達指導者が設定する目標よりも、このように自分達で決めた目標の方がはるかにモチベーション高く練習し、結果がついてくるものです。
 ちなみにもうひとつ『3年生の引退試合に負けた代は甲子園に行けない』というジンクスがあるそうです。だから3年生のサポートメンバーは引退試合も勝ちにこだわるみたいです。毎年恒例になりましたが、今年も6月18日(火)石川県立野球場でチームのサポート役に回った3年生の試合が行われます。

 野球部のモットーは『感謝・挑戦』です。ぜひそれぞれに自分たちが決めた目標に挑戦し、結果を期待したいです。