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2025年7月24日 (木)

【第897回】「なぜ数学を勉強するのか」K. N. (数学)

先日、授業中にH君という生徒から「先生、どうして数学を勉強しなくてはならないの?」
と聞かれた。なんと答えたかちゃんと覚えてはいないが「今の社会を支える科学技術は数学を基礎としているから」というようなことを言ったと思う。

H君。
あのときは時間がなくてちゃんと答えられなかったから、この場を借りて、もう少しちゃんとした答えをしよう。

一番ふつうの理由は、数学を使う仕事をするからである。

ある人が、電車の中で数学の(三角関数の)勉強をしていたら、「俺は大工なんだが、学生さん、サイン・コサインはやっておけ」と言われたらしい。

二次方程式に解の公式があってよかったと思う技術者はたくさんいる。例えば、「ダンパ」と呼ばれるバネを使って衝撃を吸収するシステムは、「二次方程式の判別式」と呼ばれる式に支配されている。

かの芥川龍之介は「文芸家たらんとする中学生は、須らく数学を学ぶ事勤勉なるべし」と言った。芥川龍之介は長編小説を書くのが苦手で、それは、数学ができないせいだと思っていたらしい。どういう論理でそうなるのかは不明だが、小説を書くにも数学が必要らしい。

でも、数学を勉強しておくべき、たぶん、最大の理由は、「数学を使う人と仕事しなくてはならないから」だろう。上の大工さんのように、数学を必要とし、日常的に使っている人は確実にいる。自分では数学を使わないし、必要だとも思わない人でも、そういう人と(ペアを組んで)仕事をすることになったら、多少なりとも数学を理解しておいたほうがいいと思わないか?

ただ、そうは言っても実感しにくいだろう。H君。だから、違う言い方をしてみよう。

いつも授業で言っていることだけど「間違えたってことは成長できるってこと」なんだ。
そして、数学は間違えたことを確実に判断できる教科なのだから、成長したことを確実に判断できるってことだ。だから、自分の成長を実感するために、数学を勉強しよう。
どう?君の望む答えになっているかな。