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2025年11月20日 (木)

【第914回】「当たり前って?」T. T. (理科)

 誰かに親切にしてもらったら「ありがとう」と言う。食事中は肘をつかない。目上の人には敬語を使う。「こういうときにはこうするのが普通だ」という社会のルールやマナーは、数え切れないほど存在します。
 では、皆さんはその“当たり前”を、どれだけ正確に把握できているでしょうか?「そんなの簡単だ」と思うかもしれません。しかし、その「当たり前」が、時代の変化や、育った環境、国や地域、職場の文化によって、実は少しずつズレているとしたらどうでしょうか?最近そのようなことを考える機会が増えました。
 最近、私は自身のクラスで受験準備のサポートをする中で、この「当たり前のズレ」を痛感する機会がありました。入試の書類確認、出願手続き、面接練習など、様々な作業をサポートするのは、担任として当然の役割です。しかし、これらの準備に対してサポートしたことに関して、「(担任だから)お礼を言われなくても仕方ない」と割り切るべきなのか、それとも「労いの一言ぐらいはあってもいいのではないか」と思う自分がいるのです。もう一つ驚いたのが、受験が終わり合否が出た時のことです。私の中では、合否にかかわらず、お世話になった先生方には自分から出向き、結果を直接報告するのが当たり前の礼儀だと思っていました。しかし、ある生徒に報告を促したところ、返ってきたのはこんな言葉でした。「え?学校にも合否は届くから、先生は知っているものだと思っていました。」この言葉には、正直驚愕しました。私の「当たり前」は、彼らの「当たり前」の中には存在していなかったのです。
 結局のところ、「当たり前」とは、過去の経験と環境によって作られた、その人にとっての最適解です。家族の習慣、学校の教え、初めての場所でのルールなど、育ってきた道筋が違えば、持っている「常識」も当然違ってきます。
 私たちの人生を円滑にしてくれる一つのツールとして「当たり前」があるのだと思います。だからこそ、新しい人間関係や環境にしっかり対応できるように、ある程度の「当たり前」を学び、身に付けておくのが大切だと、今回の経験から改めて強く思いました。
 私自身もまだまだ未熟な立場なので、生徒たちから学ぶ姿勢を忘れず、もっともっとたくさんの「当たり前」を知り、自身の「当たり前」をアップデートしながら、変化の激しい今の環境に適応していきたいと思っています。