【第899回】「叱られ上手の心得」小森 眞里奈 (国語)
学校にいると、生徒が叱られている場面によく遭遇します。そして、「あーあの子、叱られ方がヘタだなぁ」 と、たびたび思うのです。なぜこんな偉そうなことを思うのか。 それは・・・私が「叱られることのプロ」だからです。
教員になる前、私は一般企業に勤めていました。「テレビ」という名前につられて就職したのは、ケーブルテレビ局でした。華やかな世界を夢みた私が配属されたのは、お客様センター。コールセンターで、パートの電話オペレーターさんをまとめる、SV( スーパーバイザー) という職を3年経験しました。何百本、何千本という電話を受けました。そして、主に私に回ってくる案件は、クレーム対応。3年間で、何百件もお叱りをいただき、謝罪しました。謝罪の手紙やメールも、何通も書きました。時には、会社に殴り込みにくるような激昂したお客様の対応や、直接ご自宅へ謝罪に行くこともありました。
人生であんなに苦しい3年はないなと、今も思います。それでも、あの3年が私を強くしてくれました。叱ってくれる人、クレームをくれたお客様たちに私は、社会人として大きく成長させてもらったと思っています。
〈そんな私が伝えたい、上手に叱られるポイント〉
① まずはとにかく聞く
相手がどんなに理不尽でも、どんなに腹が立っても、反論したくなっても、絶対に遮らず、まずは黙って最後まで相手の話を聞きましょう。
② 感情的にならない 顔に出さない
叱られて悔しい、悲しい、怖い、腹が立つ…そんな気持ちを抱くのは当然です。でも、まずは冷静さを保つことが大切です。ふてくされた態度をとる、逆に怒るなんてもってのほか。 相手が感情的な時ほど、自分は冷静でありましょう。
③ 言い訳をしない
状況説明と正当化は違います。なぜ叱られているのか、まずは「自分に落ち度がなかったか」を考えましょう。
④ 相手の意図をくみ取る
叱る側はあなたを「良くしたい」「改善してほしい」という思いの場合が多いです。相手の真意を考えましょう。
⑤ 次にどうするかを考える
叱られたことを無駄にせず、「次からどうするか」「改善点は何か」を自分の中で整理しましょう。
私は「叱られるプロ」から、「教員」という、どちらかというと、叱ることが多い立場になりました。
叱る立場になってわかったのは、叱ることは本当にエネルギーのいることです。叱るより、見過ごすほうが、よっぽど楽なんです。
叱られて、その時は素直に受け入れられなくても、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてほしいです。「この人は、なぜ叱ってくれたのか」「私のどこを直したらよいのか。」そうやって心の中で整理していくと、叱られた経験が、自分を成長させるきっかけになるはずです。
私がお客様へよく話したエンドフレーズ
「この度は、誠に申し訳ございませんでした。また、貴重なお時間、ご意見をいただきありがとうございました。お気づきの点がございましたら、いつでもご連絡くださいませ。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
叱られて、終わりにしない。叱られたことを、次へつなげられる「叱られ上手」になってほしい。叱られたその先に、自分の未来を広げていく人になってください。