2008年6月18日 (水)

【第43回】香港遊学K. Y. (国語)

 インターアクトクラブ(国際交流・ボランティア)の顧問を20年ほど務め、毎年のように生徒を引率し海外研修に参加した。その際の雑感を述べたいと思います。

 古いことだが、返還の前後の両年に渡り、石川・富山の代表生徒を引率し渡港することとなった。同僚の先生から「ベルリンの壁」ならぬ「香港の壁」のかけらを土産にと頼まれ、見知らぬ異文化に触れる喜びに溢れながら期待して臨む。

 香港空港に到着しての最初の感想は「異様に高いビルが密集しているなあ」ということ。この最初に感じたことが、その後の旅程中に得る感想の核となったようです。

 高層ビル群に象徴される西欧文明の臭いを、この「東洋の真珠」と呼ばれた都市の至る所で感じることができた。アジア諸国の中で、成る程一つの特異性を示していると思われる。

 ただ、不満に感じたのは日本人の旅行客が多いこともあってか、中国の一都市、あるいはアジアの一都市としての文化を感じることができなかったこと。先進的な「文明」はあるけれど、アジア固有の「文化」があまり感じられないというのが、率直な感想として残りました。

 金沢にもどってから思い起こしてみると、世界史の中での香港の役割というのも、直に香港の街並みを闊歩して、少しは理解できたような気がしました。

2008年6月11日 (水)

【第42回】新米教師からのメッセージ?尾谷 力 (地歴・公民)

 目標にしていた県総体も終わり、嫁さんに尻を叩かれつつ娘たちと本棚の整理をしました。

 部活動以外にこれといったこだわりもなく、特に趣味を持たない私ですが、「暇な時は何をしてるの?」と聞かれると、積極的に「読書です」と答えないまでも、本を読むのが実は好きです。私にとってのささやかな楽しみは、子どもを寝かしつけた後の僅か20~30分、本を読むことなのです。

 しかし、ここ数年本棚の整理をさぼった結果、棚からはみだした本が床にまで溢れ、読みたい本もなかなか探せない有様となってしまいました。

 整理していくと同じ本が3冊出てきました。2冊だったら「読んだこと忘れて同じの買ったんだ」と反省するところですが、3冊ですから「よほど読みたかったんだな」と感心していたところ、さらに驚いたことにその内の1冊は十五年前に読み終えた本でした。

 題名は『論語物語』、作者は下村湖人。なぜ十五年前に読み終えたものと判明したのかと言うと、赤線が引いてあり、感想みたいなものが書いてあったからです。教師になって3年目、教え子が国体で3位に入賞した年だったので、容易に当時の記憶がよみがえってきました。

 目を引いたのが、『自らを限るもの』と題されたお話に対する自分のコメントです。「私は力が足らないので先生の教えを貫くことができない」と嘆く弟子を、師である孔子が「精一杯やるということは、まず全力で取り組んで見ることだ。取り組んでみて力が足りないのであれば、志半ばで倒れる。倒れてみてはじめて力が足らなかったと判る。お前のように、倒れもしないで力が足らないなどというのは、全力で取り組んでいない証だ」と、励ますお話です。その横に15年前の私は、『努力の結果の国体3位。今の気持ちでやれば全国で勝負できる。自分の力を限らず取り組む』とコメントしていました。

 このコメントは、私をハッとさせるに十分なものでした。それは、一昨年まで6連覇してきた県大会に、昨年は僅差で負けてしまい、現在も狂ってしまったチームの歯車を戻せないでいるからです。そんな私を見かねた神様が、25歳当時の私を通じて、「元気出せ」とでも言われているのかな?などと思いつつ、しばらく整理を忘れて読みふけってしまいました。

 今回偶然再び手にした15年前の本ですが、今だからこそ素直に読み返すことができました。そして、どうしても全国大会に出場したかった、そのためにはどんな努力もいとわなかった15年前の気持ちを思い出し、また、25歳の私から、メッセージをもらったような気がします、「自らの力を限るな」と。

 何もないところから始まった活動、ただがむしゃらな毎日の積み重ねでここまでくることができたのです。大切なことは現状ではなく、何があってもやり通す気持ちだったのです。教師になって3年目の私に、今年18年目の私が改めて教えられた気持ちです。

 さて、このコラムを書きながらも、明日の早朝練習が、生徒たちが待っています。初心に帰ってグランドに立ちたいです。ただ15年前のコメントに一言付け加えて。自らを限らず取り組め、『チャンスは後一回』と。

 我が家の本棚はまだ片付いていません。

2008年6月 4日 (水)

【第41回】総体総文 私の楽しみO. S. (国語)

Viewimg_19 今年も高校総体・総文の時期がやってきました。

この時期には、いろいろな部活・同好会の試合を見に行って応援することが楽しみの一つになります(自分が担任するクラスの生徒の活躍する姿が見られる場合は特に)。しかし、その他にも、密かに楽しみにしていることがあります。

それは、生徒たちの「いつもとは少し違う眼」が見られることです。

今年は、既に囲碁と馬術の大会を見てきました。囲碁の対局中、馬術のコース確認中など、皆集中した良い眼をしていました。学校で、授業や休み時間などに見るのとは、また少し違う眼です。生徒たちが、試合前や試合中に集中力を高めている真剣な眼をみるのも、私の楽しみです。

今週末には県内の様々な会場で大会が開催されます。

部活動や同好会活動をしている人たちは、ほとんどがこの総体・総文のために一生懸命練習をしてきたことだと思います。精一杯集中して、これまでの練習で得たものを全力でぶつけてきてください。そして、今まで応援してくれた人に良い報告をしてください。

また、3年生は、多くがこの大会をもってクラブ・同好会活動を引退することになるかと思います。引退後は、その集中力をこれまで以上に勉強に向けてください。

そして、それぞれが希望する進路を勝ち取り、良い報告をしてくれることを期待しています。
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2008年5月28日 (水)

【第40回】ありがとう植木 大 (保健体育)

 今年は北京オリンピックの年である。私もスポーツを愛する一人として楽しみにしている。

 しかし、頭の中は来月(6月)のインターハイ予選で頭がいっぱいである。何故なら、この大会で負けてしまうと一年間がすべて台無しになってしまうからだ。私は「日本一」を目標に選手達と毎日練習に励んでいる。それこそ盆も正月もない、365日一日も休まず練習している。選手は3年間だが、私は12年間こうした日々を過ごしている。

 今大会が勝利できれば、石川県大会11年連続優勝となる。ちなみに北信越大会は7年連続優勝中である。卒業生の残した記録を閉ざすわけにはいかない。いつもプレッシャーとの戦いである。

 選手達も「日本一」へと努力している。昨年はインターハイで5位、国体で3位であった。日本一まで近いようで遠い、今年はどんな年になるのだろう?出来れば表彰台の一番高い場所に立っていたい…練習をするしかない。「日本一」を夢で終わらせないためにもやるしかないのだ。

 今年の予選は小松市総合体育館で行われる。是非、選手達のパフォーマンスを見て頂きたい。きっとオリンピックに負けないぐらいの感動を与えてくれるであろう。

 最後に、いつも陰ながら応援して頂いているOBや保護者に感謝を申し上げると共に、今後ともご協力をお願いします。また、普段は言えないが、妻を始めとする家族に「ありがとう」と言うとともに、もう少しの間、夢にお付き合い願いたい…

2008年5月21日 (水)

【第39回】天は…I. I. (国語)

「天は二物を与えず」という慣用句があります。
広辞苑には「一個の人間は、そう幾つもの才能や長所を持っているものではない」とあります。たしかに人間には、人生において発揮できる能力は数多くありません。だから、「天は二物を与えず」を「ひとつこれだという自分の誇れるものを見つけたら、それを極めよ」というふうに僕は解釈していますし、この言葉の意味を具現化した「自分の一番を見つけよう!」は、本校のモットーでもあります。

 ところが、例外はあるものです。

 第35回目の山本雅弘先生のコラムをご参照願いたいのですが、野球部の一期生が、今春大学を卒業し社会人として巣立ちました。その12名のうちのひとりから、この3月末に電話がありました。

 「先生、おかげさまで無事、早稲田を卒業しました。ありがとうございました!」

 山本先生が、野球人として挫折してしまったと心を残されている生徒の一人からです。
 僕は、彼の2年生の時の担任でしたが、卒業してからも、彼は、時折近況報告をしてくれましたし、母校の野球部の試合の応援にも顔を出していました。そのつど、最後には「ありがとうございました!」とさわやかな挨拶を残します。僕はいつも「何もしてやれてないのになあ」と恥ずかしい思いをしています。

 本校の野球部は「〈感謝〉の気持ちを常に持って、練習に試合に臨め!」と教えています。「今、自分があるのは、自分を支えてくれている多くの人たちのおかげであり、その人たちへの〈感謝〉の気持ちでプレイする」という、すがすがしい教えです。彼は、卒業してもなお、その教えを忘れずに実践しているのでしょう。山本先生の教えは、野球を超越して、彼の心に生き続けています。

 天は、彼に、甲子園大会に出場できるまで努力する才能と、人間としての才能「人格」を与えたのです。もっとも「人格」は、教えられたのち、自分自身で獲得したとも言えるでしょう。

 今月、彼は、遊学館高校出身者初の弁護士を目指して、司法試験に挑戦します。近いうちに、また彼から、電話がかかってくると思います。

「先生、おかげさまで無事司法試験に合格しました。ありがとうございました!」

きっと天は、彼に三物目を与えますね。