2012年10月 1日 (月)

Vol.18 アシュリーへ、返信が遅れてごめんね。松田 淳 (地歴・公民)

 ※次の文章に登場してくる“アシュリー”とは、3年前にカナダから遊学館高校に
  短期留学をしていた女子学生です。遊学館高校の友人、先生、そして遊学館高校
  を大好きになってくれた留学生です。東日本大震災では、カナダの地元の大学で
  独自に募金活動をしてくれるなど、今でも遊学館高校にメールを送ってくれる心
  優しき女性です。カナダから日本に「遊学」した、まさに『遊学人』なのです。
  次の文章は、最近、アシュリーから送られてきた涙があふれそうな優しく・熱い
  メールに対しての私の返信です。アシュリー! 読んでくれていますか?

アシュリーへ

久しぶりですね。
なつかしいです。
ずっと、ずっと昔のような気がします。
アシュリーにとって、遊学館はいろいろなことを与えて上げられたでしょうか…。
毎年、留学生が来て、そして、お別れを迎えるとき、いつもそう思います。

でも、アシュリーは特別だった。
みんな、アシュリーが大好き。
何よりもアシュリー自身が、みんなの心の中に飛び込んできてくれた。
だから、みんなアシュリーに応えたい、何かをしてあげたいと思った。
アシュリーはみんなに溶け込もうと、人として一番大切な笑顔と、
積極的なコミュニケーションを毎日のように私たちに与えてくれた。
だから、アシュリーが静かだと、ふさぎこんでると、笑顔が無いと
とても心配だった。
私には今、小学校2年生の娘がいます。7歳です。
アシュリーのような女性になってほしいと思います。
何事にも一生懸命、小さなことに頑張る、全力で人生を生きる。

アシュリーの幸せを心から、心から祈ります。
最近、知った言葉があります。
職員室の私の机上のノートPCに、シールにして貼り付けてあります。
『自分に起こることすべては、必然で、必要で、ベストなことだ』
いい言葉だと思いませんか?
つらいことがあっても、苦しいことがあっても、それは必然で起こったこと。
それは自分が乗り越えるべき必要なこと。
そして、自分にとって障害ではなく、課題であり、チャレンジすべきことなのです。
最近、この言葉をつぶやきながら、授業に行きます。
アシュリー。毎日を前向きに! ポジティブに!

話は変わって、この前、授業中、“映画”をテーマに生徒たちと話していました。
“今まででいいなと思った映画は?”と質問されました。
私の好きな映画のひとつに『Life Is Beautiful』(1997、イタリア)があります。
第71回米国アカデミー賞で主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞を受賞した作品です。
この映画に登場してくるグイドのような父親になりたいと思っています。
実は、先ほど紹介した最近出会った言葉、
『自分に起こることすべては、必然で、必要で、ベストなことだ』と同様に、
自分自身を励ます言葉がこの映画のタイトル『Life Is Beautiful』なのです。
仕事で疲れたとき、人生に悩んだとき、自分を見失いそうなとき、
これまでこの言葉が支えてくれました。
苦しいときこそ、つらいときこそ、笑顔で『Life Is Beautiful』…とつぶやくと、目
の前の障害が、自分が大きくなるための課題のように思えてきます。
次の新たな自分に出会えそうで、新しい明日が来るようで、ワクワクしてきます。

アシュリーに話しかけていると、目の前にいるようで、止まらなくなります。
アシュリーの勉強と宿題の邪魔になってしまいます。(笑)
もう終わりますね。
アシュリーの毎日が、
アシュリーの人生が、
アシュリーが生きているそのことが、ずっと『Beautiful』でありますように…
祈っています。

今日の金沢は沖縄から九州へと台風が通過しているため、夜遅くから雨のようです。
日本はようやく、暑い夏から、涼しくさわやかな秋へと季節は移っています。
私の家の庭では、秋の虫たちがすばらしいシンフォニーを奏でてくれています。

2012年9月27日 (木)

【第248回】「したくないことはしない」

 私は、いわゆる「座右の銘」や「人生哲学」なるものは、もちません。他人を指向したくないからです。

 ところが、作家瀬戸内寂聴さんが自らの「生き方」を問われて、「したくないことはしない」と回答していました。私と瀬戸内さんとは全く共通項はないのですが、考えてみれば、私もたまたまそんな生き方をしてきました。

 「したくないことを我慢しながらしている」人には、大変申し訳ないのですが、「したくないことはしない」は、よりよく生きるためのキーワードの1つになりそうです。

 ただし、この結果、起きることに伴う責任は、自らが背負うことになります。たとえば、「好き嫌い」「勉強」「掃除」などなどです。そう言う私も、長年の「したくないことはしない」をしてきた結果背負う責任が、積もり積もって重い十字架のようにずっしりと肩に食い込んでいます。

 さて、遊学館高校においては、「したくないことはしない」という消極的な姿勢でなく、
「したいことをする」という攻めの姿勢です。そのような校風に刺激されながら、私も、少しでも守りから攻めに転じたいと考えています。

2012年9月20日 (木)

【第247回】 音磨き大嶋 直樹 (芸術)

遊学館高等学校吹奏楽部の指導を始めて、約350日が経とうとしている。
毎朝同じメニューで、部員と共に地道で地味な練習を繰り返している。

性別も性格も感性も家庭環境もそれぞれ全く違う人間が同じ呼吸をして、53人で同質の一音をめざす。
普通に考えれば合うはずがない。

最初は合わないことを、周りの奏者のせいにして、技術のせいにして、楽器のせいにして。

しかし、毎日やればだんだん気が付いてくる。
全員で調和させられるかは、自分次第であると。
自分自身に目を向け、耳を傾ければ隣との合わせ方がわかってくると。
自分自身の音に責任を持たない限り、周りと合わすことができないと。

なかなか難しいけど、最近良い音がする瞬間が少しずつ増えてきた。
本当に調和した時は、重厚で、豊かで、そしてやさしい音がする。

今月末の定期演奏会で15名の三年生は卒部する。
私が遊学館で見送る初めての仲間である。
このメンバーで音を磨ける日もあと数日と思うと、一音一音がとても重く感じる。

輝きに満ちた音でフィニッシュできるよう、最後まで諦めずに磨きあげたい。

どうか皆様、ご来場いただき彼らの音を聞いてください。
第81回遊学館高等学校定期演奏会は9月28日(金)18:30からです。
金沢市文化ホールでお待ちしています。

2012年9月13日 (木)

【第246回】 「change and challenge」植木 大 (保健体育)

 長いようで短い夏季休暇が終わった。今年も金沢にいなかったように思う。インターハイ前合宿から始まり、小学校・中学校・高校の各大会に足を運んだ。夏季休暇だけで26泊も県外に宿泊したことになる。試合結果は様々で、メインのインターハイは5位で終わり、小中学校も満足のいく結果を残せず、各カテゴリーで課題が残った。反省点・課題を明確にし、同じ失敗をしないようにしたい。

 私も来年で40歳になる。平均寿命から言えば、折り返し地点を過ぎてしまっている。30代最後を迎え、色々と考えることが多い。現状のままでいいのか?満足しているのか?新しいことにチャレンジしたい気持ちもある。変化する勇気も大切だ。そんなことを考えながら練習していると、あっという間に一日が終わってしまう。24時間が短く感じる。歳のせいだろうか?それとも充実しているのか?

 ともあれ、時間は待ってはくれない。国体・全日本と試合は近づいていく。新メンバーの強化も急ピッチで行われ、10月には継続練習も6000日を迎える。時間は刻々と過ぎていく。過去は変わらないが、思い出となり歴史として残っている。未来は変えることが出来るが、その責任は自分次第だ。預かっている子どもたち、応援してくれる人たち、家族のためにも良い未来を創って歴史を刻みたい。

2012年9月 6日 (木)

【第245回】 オリンピックからのメッセージA. K. (保健体育)

 今年の夏といえば、やはりロンドンオリンピックであろう。7月27日から8月12日まで夏季オリンピックがロンドンで行われ、世界中の人々が熱狂した。もちろん、そのなかの一人に私も入っている。

 私は昔からスポーツが好きだということもあり、今回のオリンピックでLIVE中継されている競技は、時間の都合があえば見るようにしていた。柔道、レスリング、サッカー、卓球、バドミントン、バレーボール等々、オリンピック期間中はテレビに釘付けになり、飽きることがなかった。おかげで、睡眠不足になることが多かったが…。

そんな話はさておき、いろいろな試合を見ていたおかげで、ある一つの試合と出会うことができた。それは、バドミントン女子の佐藤選手の試合である。

 佐藤選手は、シングルス1回戦でデンマークのバウン選手と対戦し、優勢に試合を進めていたが14-10で迎えた場面で、ジャンプショットを打つ際の着地時に左膝靭帯を損傷し、その場に倒れこんでしばらく動けなかった。その後のプレーを見ても、痛みで脚を引きずるほどの状態だった。監督に棄権を促されたが、首を横に振って試合続行を選択した。それでも棄権はしなかった。痛みを耐えて最後までプレーしようとするが思うように脚が動かず、涙がとまらない。15-14とリードした状況だったが、耐えられなくなった監督はコートに飛び出し、途中棄権を佐藤選手に告げた。顔をくしゃくしゃにした佐藤選手は泣きじゃくって主審に棄権を告げた後、車いすでコートを去った。

 「最後まで戦う」という姿勢が、試合会場の観客だけでなく、世界中の人々に感動と勇気を与えてくれた。私もテレビで見ていたが、佐藤選手の最後まであきらめない姿勢や簡単にコートから立ち去らなかったことを考えたとき、自然と涙がとまらなかった。

 佐藤選手にとっては、辛いロンドンオリンピックだったかもしれないが、この夏に感動と勇気というメッセージを残してくれたことに感謝したい。そして、早く怪我を治して、次のオリンピックで活躍してもらいたい。