2025年1月30日 (木)

【第872回】「夏目漱石「こころ」 小説を読んでみよう」和田 康一郎 (国語) 

 日本の高校生は、最も難しいタイプの小説まで、在学中に学んでしまいます。代表例が夏目漱石の「こころ」です。「こころ」の内容を理解するためには、ちょっとした発想の転換が必要です。皆さんがこれまで出会ったほとんどの物語は、主人公に寄り添って読んでいけば良いものだったことでしょう。しかし、「こころ」は、主人公の言い分を信じないで、客観的に状況をとらえる必要があります。「こころ」は、心がいかに客観的状況と異なる光景を見せるかを描いた小説だからです。
 主人公の「先生」は、親友Kを自殺に追いやったことに、生涯苦しみます。どう行動すれば、Kの自殺を食いとめられたかを考えることが、「こころ」を読む焦点です。
 主人公の「私」(若い時の「先生」)は、畏友Kの告白を聞いて恐怖を覚えます。これが、失敗の始まりです。道への精進のみ考えていると思われたKが、下宿先のお嬢さんに対する恋を告白したので、敵わない相手が自身の恋のライバルになったと思い、「私」は動揺します。しかし、冷静に状況を見るなら、Kは別にライバルだと恐れるほどの存在ではありません。それなのに、進むべきか退くべきか教えてくれと批評を請う親友を、「私」は痛撃してしまいます。Kを救うチャンスでしたのに。
 「私」は「お嬢さんをください」と保護者の奥さんに談判します。Kの心を知りながら出し抜く、裏切り行為です。ですが、ここでなぜ奥さんが了承したか、Kが同じことをしたらどうなるかを「私」は想像するべきでした。(Kには、この談判はできません。)「私」には一生食べていける親の遺産があります。一方、Kは実家からも養家からも勘当され、授業費等も卒業まで「私」が面倒を見ている身です。Kが談判しても、常識人の奥さんは断り、卒業後どうするのか決めるのが優先だと、Kを諭すと予想できます。
 Kに批評を請われた際、「私」は次の三つのような声をかけるべきだったと思われます。
1、恋をするのは恥ずべきことではなく、祝福すべきであるとKに伝える。
2、ただし今回は、残念ながら経済状況が悪いから退くべきだと、Kを諭す。
3、その行動選択はタイミングが悪いためであり、Kの人格には問題ないと請け負う。
このように話せば、「私」は親友としての務めを果たすことができたでしょう。
 恐怖が見せた幻影(=Kを倒すべき恋のライバルと考える)に脅かされて、「私」は親友に対する裏切り行為とそれがもたらした自殺に苦しみました。<心>でなく<頭>で客観的に状況を見る必要があった、と指摘ができます。
 「語り手の言い分を鵜呑みにしてはいけない小説」という最も難しいタイプにまで、在学中に皆さんは接します。ですから自信を持って、他の名作小説の読書にもチャレンジしてみてほしいと思います。

2025年1月23日 (木)

【第871回】「卒業に向けて」Y. M. (理科)

 高校生活1年、2年、3年間で人としてどう成長できたでしょうか。そして、これからもどう成長していくのでしょうか。
 自主自律、礼儀礼節、自他尊重。自律し、謙虚な姿勢で、他を尊重できるようになったでしょか。人としての土台を整え、挑戦しているでしょうか。
 改めて現状の自分を見つめなおし、これからどうしていくかを考えてみてください。
 卒業後は、12年間生活の一部だった担任といわれる様々な形でサポートしてくれた大人は基本的にはいなくなります。守られた環境にいる間に成長しましょう。これから先、誰と助け合い支え合っていくかは皆さん次第です。お互いが一緒にいて安心できる成長し合える仲間や先輩と出会い、楽しい有意義な毎日を過ごせるようにしてください。
 そして、自分の成長が数値でわかる1年後、2年後、数日後に行われる高校生活最後の期末考査に向けて、今までの学校生活の成長を自分で実感できるようにしてください。どんな準備をしてどう生活してきたかが数値で実感できると思います。今日からでも遅くありません行動し良い準備をしてください。
 最後となりますが、お互い目的に向けて行動し、良かったこと、悪かったこと、次どうするかを考え、また、行動していきましょう。素敵な日々が送れますように。

2025年1月16日 (木)

【第870回】「選択の多様性」Y. M. (地歴・公民)

 選択の多様性は、時に人を不幸にしてしまう。
 決断の後は、他と比べず、選んだ時の喜びを大切にし続けることだ。(某新聞より)


 今の世の中、誰もが多くの選択肢を持って生きることができる。
 それは、自分自身にあった人生の選択ができる非常によい環境でもある。


 しかし、上記の言葉のように時に人を不幸にしてしまうことがある。
 何故なら、選択肢が多すぎて選べないことと、選んでからも本当にこの選択でよかったかと悩んでしまう場合があるから。
 それでは、選んだ方向に迷いや後悔がなく進んでいくためにはどうしたらいいのだろうか?
 遊学生のみなさんもこのような思いを抱くことが多々あるだろうし、そういう悩んでいる生徒とたくさん接してきました。
 進路のことや、部活動のこと、人間関係など多くの選択肢がある中で決断をしながら日々、生活をしています。そんな時に私自身が思うことは、まず選択肢を一つに絞り込むのではなく、いくつかの選択肢を可能な限り行動に起こしてみること。
 進路で悩んでいるのなら、実際にその学校や職場に足を運ぶこと。部活動でうまくいかなかったり、辞めようとか思っているなら、誰かに相談してみて、自分の気持ちを理解してもらったり、つらいところをもうひと踏ん張りしてみるとか。
 人間関係で悩んでいるなら思いを相手に伝え、誰かに相談してみること。
 どれも行動を起こす前にマイナスな考えが膨らんで諦める生徒が多い気がします。
 逆に、行動に起こしてみると思っていたよりもできる自信がつく生徒も多いです。
 何事も、行動してみる。行動したら決断をする。決断をしたら続けるタイムリミットを決める。
 半年? 1年? 3年? 自分でできそうなリミットを決め、自分に約束をする。
 決断をして、覚悟を決めても途中で面倒くさいとか、つらくなることは何にでもある。
 そのつらくなった時に、他の選択肢にしておけばよかったとは誰もが思うこと。世の中にたくさんの選択肢があれば致し方ない。
 ただ、他の選択肢を選んだとしても、この面倒くさい、つらい感情は必ずやってきます。
 ということは、何を選んでもうれしいことも、嫌なこともあるということを受け入れて次に進むことです。
 多くの生徒がこの思いで自分の決めたことに取り組んでくれれば、道は開けていくと思います。
 新しい年を迎えて、誰もが充実した日々を望むはずです。


 遊学生の一人でも多くの生徒が楽しいし、成長していると実感できる一年になるように祈っています。

2025年1月 9日 (木)

【第869回】「能登半島地震」Y. H. (英語)

2024年1月1日 16時10分前、「揺れてる」 最初はいつもの地震だと思った。でも揺れがなかなか止まらない。
 テーブルには早めの夕食の準備で、おせち料理やお雑煮が並べられていた。揺れがどんどんひどくなり、慌ててストーブの火を消した。その瞬間(16時10分)、ドーンという激しい地震に襲われた。家全体が円を描くように揺れテーブルから料理が落ちていく。私たちはすかさずテーブルの下に潜り込んだがおさまらない、慌てて家の外に出ようとしたが、玄関の階段が崩れていて、外に出るのも大変だった。
 しばらくすると、市役所から「大津波のおそれがあるので、ニュースを聞いていないで今すぐに高台に避難して下さい。」という警報が流れた。私たちはなりふり構わず、車に乗り込み高台に向かった。すでに多くの車が行列になっており、なかなか前に進まない苛立ちと不安でいっぱいだったが、ようやく安心できるくらいの所まで上ってきた。
 4時間ぐらいそこで留まっていたが、大津波の心配も解除され一旦家の様子を見るのに戻り、その日は家に入ることもできず、家の前で車中泊をした。

 あれから1年、家族を失った人、負傷した人、家が倒壊した人、本当に多くの人々が辛く、悲しい思いをした日々でした。

 2025年1月1日、あの恐怖にみまわれた16時10分が近づいてきたとき、時間を刻む自分がいた。「夕食の準備をしてみんなでお正月料理を楽しむはずだったのに、、、、」 何かやる瀬ない思いがこみ上げてきたと同時に、今なにも起きていないこの瞬間に安堵した。

 復興が進まず、まだ道半ばの状態で不便な生活を送っている人が本当にたくさんいます。今後、今までの日常生活が戻るまでに何年かかるか分からない状況ではありますが、この美しい能登半島の景色、美味しい海のもの、山のものを守っていけるように、皆が一つになっていきたいですね。私も少しでも携われるように頑張ります。

 この悲惨な経験を通して、人生の厳しさを目の当たりにしました。しかし、前を向いて一つずつその山積みの問題に取り組むことの大切さも学びました。

『人生で試練に直面することは避けられないが、困難の中には 《 ひかり 》 が潜んでいて、人々のチームワークと協力があれば、素晴らしいことが達成できると信じています。』

20250109

2025年1月 2日 (木)

【第868回】「きっかけ」Y. H. (数学)

 新しい年になりました。皆さんは今年の目標など、決めたり、宣言したりしましたか。私は、家族が元気に、楽しく過ごせるようにしたいということと、今担任している2年7組、授業に出ている3年11組文系・2年11組の生徒と残りの学校生活や授業を充実したものにしたいなと思っています。
 年末に、大学時代の友人と会いました。卒業後も会う機会は何度かありましたが、それぞれの生活の変化において、最近は会う機会がなくなっていまいた。きっかけは些細なやりとりでしたが、今回、お互い子どもを連れて、会うことができました。久しぶりに会いましたが、久しぶりではないような気がして、不思議な感じがしました。
 その友人達とは、大学・学部は同じですが、学科や年齢は違い、あるイベントの企画・運営に参加したことがきっかけで知り合いました。なぜそのイベントの企画・運営に参加したのかということも忘れてしまいましたが、そのきっかけが、大学卒業してもつながっていくこと、お互いの子どもたちが一緒に遊んでいること、すべてが私にとって、かけがえのない出来事でした。人と出会うためには、そのきっかけを自分で作らないといけません。このブログを読んでいる方が、自分できっかけを作ってみようと思えたら幸いです。
 これから、大学受験が本番に入ります。受験生の皆さんは、徐々に近づいてくる共通テストに、緊張や不安を感じていると思います。忘れないでほしいのは、今まで努力してきたことは、無駄にはならないということです。今は不安なことが多いと思いますが、その先には、新しい学びの環境があり、そして新たな仲間ができ、充実した生活が待っています。前を向いて、最後の1秒まで、自分に負けずに努力をし続けてください。