【第817回】「新しいことへの挑戦」K. M. (英語)
私は運動が苦手だ。50m走は10秒台、水泳の人生最高記録は21m、逆上がりができたのは人生でたったの一回だけ。自転車をうまく停車できなくて、坂を猛スピードで下って正面に合った植え込みに突っ込んだこともある。とにかくどんくさい。小さい頃からずーっとどんくさい。
が、こんな私がとある意外な資格を持っている。それは「普通自動2輪免許」だ。「中免」と呼ばれたりもするが、400㏄までのバイクに乗れる免許だ。自動車の免許を取れば自動的に取れる原付免許とは異なり、この免許を取るには自動車の免許を取る時と同じように試験を受けて合格しなければならない。
なぜどんくさい私がこんな免許を持っているのか。その理由は20年近く前に遡る。
私は2003年に大学院を修了後すぐに教員になった。社会人一年目。非常勤講師などを一切経験しないままいきなり教員になった。そしていきなり中学一年生の担任になりそれはそれはとても忙しい毎日を過ごしていた。毎日大変だったが、特に経験が浅い私にとっては学期末に書く通知表が最も厄介だった。特にコメント欄の内容には学期ごとに困り、最後にお決まりのセリフのように「~を頑張りましょう。」や「来学期は新しいことにも挑戦してみましょう。」のような言葉を書くようになった。毎回毎回、いくつもの通知表にそんなことを書いた。が、ある時ふと気が付いた。「人に言うだけで私は最近何かに挑戦したことはあっただろうか」と。「新しいことに何も挑戦していない私が子どもたちにそんなことを言う資格があるのだろうか」と。
そこで私は毎年何か一つ挑戦してみることにしたのだ。なんでもいい。授業での話のネタにもなるしちょうどいいし良い考えではないか。色々考えてみて、大学時代の友人たちに時々乗せてもらった大型バイクを思い出した。私も運転してみたいなと思ったことがあったからだ。
ただ、大型バイクの免許を取るのは体型的に無理があると思い、中型バイクの免許取得を目標と決めた。その時すでに自動車の免許を持っていたが、再度自動車教習所に入学。毎日仕事終わりに教習所に通った。なにしろどんくさいので技能講習時間には色々やらかした。教習用バイクのミラーをへし折ったり、バイクがウィリーした後で前輪が一気に下に落ち、前にあった上り坂に激突したり…。かなり苦労したが、免許を取った時にはとても嬉しかったし達成感もあった。何かに挑戦するのも悪くない。「グラストラッカ-」という細身の250㏄バイクを買い、通勤にも使ったりしてバイクのある生活を楽しんだ。
翌年以降は身の丈にあった挑戦をしようと思い、英語の検定試験を受けたり、行ったことのない国に旅に出たり、茶道を始めたり…。着物の着付け教室にも通った。ホットヨガに通ったこともあった。今思えば良い経験ばかりだったと思う。
が、ここ10年は子育てに時間も労力も費やしてきたので何かに挑戦できていなかった。そのことがずっと心に引っかかっていた。生徒に言うだけで自分は何もしていない。そんな自分に戻っているではないか、と。そこで去年3月、約15年ぶりにTOEICに挑戦してみた。かなり久しぶりの受験ではあったが、900点を超えることができた。しかも900点超えは人生初だった。これもまたやってみて良かったと思う。
今私は50代にどんどん近づいてきているが、20代の私が掲げた「毎年何かに挑戦する」という目標を再度胸に抱いて2024年を過ごしたい。
10代の皆さんは今年、どんなことに挑戦しますか。