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2016年2月18日 (木)

【第413回】 「辻占」中村 ゆかり (国語)

『足るを知る』― 今を満ち足りたものとし、現状に不満を持たない者は、満ち足りた心で生きていける。己の身の程を知り、それ以上を望まない事が、豊かに生きるということである ―

 2月10日、今年度の「遊学生の主張コンクール」が実施された。1,2年生全員が日頃考えていることや感じていることを冬休み中の課題として800字程度で主張文を書き、各クラス代表者を1名選出して発表する。今年は例年以上に素晴らしい発表内容が多く、どのクラスも本当に健闘したと感じられるコンクールであった。
 冒頭は今年の私のクラスの代表生徒の主張タイトルに続く言葉である。彼女は家族恒例としている辻占で、今年引いた『足るを知る』という言葉の意味を知ることによって、自身の十七年間を振り返った内容の主張文を書いた。
 反抗期の中学時代に「努力したら絶対いいことあるし、楽しいことたくさん待っとるよ。」と見放すこと無く声を掛け続けてくださった中学校の先生方、辛いとき悩み事を聴いてくれ、笑顔にしてくれた先輩や仲間達、そして十七年間、道を逸(そ)らすことのないように厳しくも愛情を注ぎ育ててくれた両親、これまで自分を支えてくれたすべての方々に心からの感謝を伝えたいという思いが綴られていた。
 彼女の溢れんばかりの思いの詰まった主張文。加賀の正月の縁起菓子として親しまれてきた辻占を毎年恒例とするステキな御両親のもとで育ち、たくさんの方々の支えがあってこそ今の幸せな自分があることに気づくことができた。まさに「足るを知る」である。そうした自身の思いを上手く言葉に載せて表現できたことは、授業とは別の場面での生徒の成長ぶりを見ることができて嬉しい限りである。私はここ数年、クラスの生徒達の主張文を3学期の成績表とともに保護者の方々へ送付している。生徒一人一人が今の自分を見つめ、自分の言葉でまとめた文章に目を通すことで、それぞれが考えていることを保護者の方々にも共有して頂きたいと考えているからだ。私同様、我が子の成長を実感して頂けることと思う。

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 来年、人生二度目の大きな岐路に立つ彼女は、併設校への進学を目標としている。
 文は努力を重ねて自身の目標を達成し、将来の夢を実現することで支えてくれた方々に「ありがとう」を伝えたいと締めくくられた。