2020年4月23日 (木)

【第625回】 「4年目の遊学」中村 裕行 (地歴・公民)

 私事ですが、3月に通信制大学院の修士課程を終えることができました。

 通信制ということで、インターネットを活用した学習システムを通してレポートの添削指導などを受けます。最初の1年は、このシステムすらよく理解できず、ペースもつかめなかったため、ほとんど無駄に過ごしてしまいました。しかし、東京の大学キャンパスで行われたスクーリングは、久しぶりの学生気分を味わえたり、違う職業の方々や現役の大学生とも交流できたり、とても新鮮で有意義な時間となって、学習も軌道に乗り始めました。中でも、同じ先生に修士論文の指導を受けるゼミ友4人の皆さんとは、LINEのグループで連絡を取り合い、現状報告や情報交換を重ねました。うち1人はトルコにお住まいの方だったので、SNSに不慣れな私は、海外と気軽に連絡が取れることに改めて感動しました。

 この3年間、特に最後の1年は2万字以上で修士論文をまとめねばならず、特進の受験生に負けないくらい家庭学習を重ねました。この3年間の学びは、まさに異郷での学び、異次元・異空間の学び、遊学の学びでした。さらに、4月からは研究生として研究を続けることとなりました。これからも自らが学び続けることにより、生徒達に学ぶ姿勢や学ぶ喜びを伝えていければと思います。学びは成長につながり、世界も広がります。感染症対策で通常の授業が行えない今こそ、様々な形での学び、主体的に学ぶ姿勢が問われています。学びは、教室や学校の外にもたくさんあります。遊学館の生徒達には、今だからこそできる学びを積み重ねてほしいと思っています。

 * このホームページ上の「遊学生徒会だより」に、生徒会役員の高井さんがオンライン授業についてふれた文章を寄せています。たいへん興味深く読みました。

 

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<4月17日(金)第2学館屋上から…世の騒ぎを忘れるような清々しい朝です。
まさか、「沈黙の春」(本来は環境破壊による生態系の異変を
警告した本の書名)がこのような形で人間社会に訪れるとは…>

2020年4月16日 (木)

【第624回】 「2020年に思うこと」N. H. (保健体育)

 新学期が始まりました。411名の新入生を迎え、新鮮な気持ちで新年度に取り組んでいこうと思いますが、新入生だけではなく、新2・3年生もまた我々教職員や保護者の皆様も個々に期する思いがあると思います。

 しかし、2020年の幕開けとともに新型コロナウイルス感染症が中国から全世界に拡大し、現在もなお猛威を振るっております。日本も内閣総理大臣が緊急事態宣言を発出したにもかかわらず東京都を中心に感染者が増え続けています。石川県も少しずつ感染者が増加しており、いつ生活環境が汚染されるのか不安はありますが、不要不急の外出や日頃から意識しない手洗いなど出来ることをしていくしかないのかなと感じております。

 今回の感染症に限らず、常日頃から“自分には関係ないから”“自分は大丈夫だろう”などその根拠のない自信はどこから湧いてくるのだろうと不思議でなりませんが、他人事や無責任な行動を慎むことを改めて考えさせられました。

 いつかは終息が来ると思いますが、日常の生活が送れるようになることを祈っています。

 暗いニュースばかりで気持ちが滅入りますが、この状況を皆で乗り切り、できるだけ良いスタートができるように準備を入念にしていきましょう!

2020年4月 9日 (木)

【第623回】 「遊学の桜」松田 淳 (地歴・公民)

202004091_2教頭の松田淳です。
新型コロナウイルス感染症対策のために、
本校は4月10日(金)~5月2日(土)まで
休校措置を取ります。
学校の中は臨機応変に対応しつつも、
日々てんやわんやです。
今回はお忙しい先生方のピンチヒッターとしての登場です。(笑)

4月8日(水)午後1:30、これから入学式が始まります。
2日前に急きょ、保護者の方のご参列をお控えいただく旨のご案内を
ホームページから差し上げました。
保護者の皆様には大変申し訳ありません。
本校は県内全域、県外は全国各地から新入生が入学してくれています。
そして毎年、県内外から多くの保護者の方に式典にお集まりいただいています。
結果、学校として感染リスクを減らすために、「密集」の数を
少しでも減らすことからのお願いとなりました。
何卒ご理解お願いいたします。

私たちが右往左往する中で今年もまた「遊学の桜」は綺麗に咲き誇っています。
遊学館高校の敷地内のいたるところに桜の木があります。
自然は永遠に、その生命を静かにひたすら静かに繰り返しているのですね。
毎日の通勤途上の兼六園の様子も、春夏秋冬、
日々鮮やかな風景を観ることができます。
私は、やはり春の兼六園、桜の兼六園が好きです。

今年は新型コロナウイルス感染のため、児童・生徒の学校生活に
大きな影響が出ています。
延期、中止、とりやめなど、今まで節目節目に味わえた学校行事や
学校生活の思い出がコロナウイルス一色になってしまう哀しさがあります。
しかし、私自身、教師になって35年…
今まで生徒たちを見続けて思うことがあります。
生徒たちは私たち大人が思う以上に強さと、しなやかさを持っています。
自らベクトルを次に(前に)切り替えできる対応力を持っています。
たくましいです。
私はその若者の力を信じています。
信じるからこそ、この教師という仕事が大好きなのです。

今、「遊学の桜」の中のひとつ、体育館前の桜が登校してくる新入生たちに、
“たとえ何が起っても、その瞬間できることにベストを尽くしなさいよ…”と、
優しく励ましてくれるかのように桜吹雪で包み込みながら迎えてくれています。
その真新しい制服の肩や黒髪には桜の花びらが贈られています。
生徒諸君、保護者の皆様、ともに頑張りましょう。
この状況の中でも楽しさや充実感、
そして、やりがいはところどころにちりばめられています。
心の持ち様で見方や考え方、歩み方も変わります。
日々、「何事も前向きに!何事も感謝の気持ちを持って!」…ですね。ファイト!

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2020年4月 2日 (木)

【第622回】 「祈り」中川 都 (国語)

 令和2年度が始まります。今年度の新任の先生の中に本校の卒業生がいます。私は彼の2年生・3年生の時の担任でした。彼は在学中野球部に所属し文武両道を実践し、高校生らしい正義感の持ち主でした。主将としての責任と仲間に真正面から向き合い、誰よりも真剣に練習をし、甲子園出場を果たしました。野球部を引退してからは、大学合格に向けて一生懸命に勉強に取り組みながら、クラスの友人たちと親しみ、学校行事を楽しみ、充実した毎日、高校生活というのは、こんなに素晴らしい時代なのかと彼達を見て思いました。本校で学校生活を送る生徒達を見ると、高校時代というのは、何とエネルギーに満ち、密度が濃く、キラキラ輝くことのできる時代なのかと思います。
 今世界は、新型コロナウイルスの猛威にさらされ、感染拡大を防ごうと、東京オリンピックの延期、春の高校野球選抜大会の中止、様々なイベント・大会が延期や中止になっていますが、収束の見通しは立っていません。学校生活がまた、大きく制限されることが起きるかもしれません。そうならないように、高校生達がこの素晴らしい時期を、キラキラ輝きながら過ごすことのできる日々になるように祈っています。

2020年3月26日 (木)

【第621回】 「敬礼」中川 光雄 (保健体育)

 私が顧問をしている野球部から今年度32名の部員が巣立っていった。この中に、私が将来なりたかった職業のひとつである[警察官]を目指した部員が3人もいた。彼らは甲子園で活躍することを目標に、野球の練習に打ち込んでいたが、残念ながら3人ともレギュラーには一度もなれず、公式戦でプレーすることはできなかった。しかし、チームの勝利の為にレギュラー陣と競争する傍ら、これからの野球部を背負っていく新入生の練習を手伝ってくれる心優しい誠実な部員であった。
 彼らが進路実現のための本格的な勉強を始めたのは、3年の夏、星稜に敗れて高校野球が終わってからだろう。この時の学力では、「警察官採用試験」の合格は正直厳しいと思っていた。3人にも不合格だった時のことも考えておきなさいと何度も話をしていた。ところがこの3人は、私の予想を大きく覆す素晴らしい結果を残すまでに力をつけていった。夏休みは起きている時間のほとんどを勉強に費やした。2学期に入ると学校では勉強、放課後は体力試験のためにトレーニングを続けた。野球部の朝礼で毎日顔を合わせていたが、日に日に顔つきが凛々しく変わっていくのがわかった。採用試験合格という目標に向かって勉強に打ち込む姿の中に、野球の練習の中で培った粘り強さと不屈の精神が表れていた。しかし、合格のために勉強しているのは彼らだけでなく、警察官になりたい全国の人たちも同じことである。合格発表前日までは3人のうち1人だけでも受かってくれたらと願っていた。合格発表の日、私は期待より不安が多く、不合格だった時のフォローの言葉ばかり考えていた。

 結果はなんと3人全員合格だった。

 私は卒業式の日、これからそれぞれの場所での活躍を祈念し、部員全員にかたい握手をさせてもらった。この3人にも力をこめて握手した。

 〔敬礼〕とは「相手に敬意を表明するために礼をすること」という意味で、下位の者が上位の者に対して行うのが一般的だそうだ。これから3人は警察学校へ入学し、約1年間の研修期間に入る。3人がこれまでと同様に真摯に取り組む姿が想像できる。1年後、社会に出て警察官になる彼らに出会った時は握手でなく、〔敬礼〕させていただく。

 世のため、人のために働く卒業生へ〔敬礼〕。