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2020年2月13日 (木)

【第615回】 「期待していないから」T. M. (数学、情報)

 教員になって2回目の全国高校駅伝。7人で襷をつないだ合計タイムで競うこの競技。選手は1年の365日中、この1日のために日々の練習に励む。その成果として、一昨年の2018年の全国大会では、2:07’43”のタイムで石川県高校記録を塗り替えることができ、昨年の2019年の全国大会は、2:06’11”で前回大会の石川県高校記録をさらに更新することができた。しかし、大きな大会で自分の力を発揮することは簡単ではない。トレーニングが不十分だった時の不安、周囲からの期待とプレッシャー。その中で自分を奮い立たせ、力を発揮しなければならないのだ。駅伝の場合はそれを7人全員ができなければ戦えないのだから本当に難しい。
 私はそこである言葉を選手に言うようになった。「大丈夫、期待していないから」。これを読まれている皆さんはこの言葉を言われた時、何を思うだろうか。本来これはネガティブな発言として認知されている。しかしこれを選手に言うと、表情が和らぎ、過度のプレッシャーから解放されて良い表情をする。なぜなら、選手はその裏に隠された真意を分かっているからだ。私が言った言葉の裏には、「少しでも過度の期待から解放して、思う存分楽しんできなさい」という想いがある。石川県の子どもは他県の子どもと比べて、大人しく真面目な性格が多い気がする。競技的な傾向もあるが、自分で自分にプレッシャーを与えることがよくある。その中で監督やコーチ、保護者からの期待は過度の期待になってしまうのだ。だから、生徒には「大丈夫、期待していないから」という言葉をかけている。もちろん人間は十人十色だ。その言葉が本人にどう影響するかを熟考する必要がある。しかし、ネガティブと捉えている言葉もその裏に隠された真意を知れば、捉え方は変わるのではないだろうか。表面的な部分だけを鵜吞みにするのではなく、客観的な視野を身につけることが現代の子どもには必要なのではないだろうか。そうすれば噂や第三者から不利益な情報を聞いたとき、冷静に対処することができるかもしれない。
 保護者や指導者にとって、子どもに期待をしたくなる場面は多々あるかもしれない。しかし、過度の期待は時にプレッシャーとなり、子どもを苦しめてしまうこともある。その時、肩の荷を下ろしてあげる言葉を伝えられれば、最大限のパフォーマンスを発揮できるのではないだろうか。「期待していないから」。少しでも良い結果を残せることを現代の子どもに期待している。