【第304回】 【映画&歌で英語】E.T.の残した5つの言葉渡辺 祐徳 (英語)
「先生は映画の字幕がなくても分かるの?」
「先生は英語の歌の歌詞が分かるの?」
生徒からよく聞かれる質問である。
教科書に書いてあることはとっつきにくいが,英語の映画や歌がそのまま理解できるようになりたいと思う生徒は多いようだ。私自身もそうだったが,字幕や歌詞カードを見なくても少しずつ分かるものが増えてくると,英語が面白くなった。ついでに学校の成績も上がった。挙句の果てにはいつの間にか,英語を教える仕事に就いている。
生徒が将来英語を一生の仕事として選ぶとは限らないし,むしろそれはごく少数派に違いない。しかし私の場合,英語が好きになれたことがきっかけとなって,自分の進むべき道を決めることになった。そうして今度は自分の生徒たちと顔を合わせながら,教科書を読ませ,英単語テスト等で追い立てながら,なんとか英語の楽しさ,面白さを伝えたいと密かに思っているのだ。できれば自分の授業が,生徒がそれぞれの将来について考えるきっかけの一つになれば嬉しいと思っている。
今の高校生たちにも,自分の好きなものを選んで,楽しみながら英語に慣れ親しんでほしい。たとえば映画などはもってこいの教材である。字幕を出したり隠したりできるDVDなどがある時代である。それを利用しない手はない。映画と言っても数えきれないほどあるが,今回は1つだけ紹介しようと思う。
◆『E.T.』(イーティー、E.T. The Extra-Terrestrial)◆
古い映画で申し訳ないが,「面白くてわかりやすい」ということを優先すると,真っ先に思い浮かぶのがこれだ。
E.T.は遠い星からやってきた宇宙人だ。地球上の植物採取をしているうちに人間に見つかり,大慌てで宇宙船まで逃げ走る。ところが目の前まで来た時に,宇宙船は飛び去ってしまう。この作品は,一人地球に残された彼が,エリオット少年や兄妹らとの友情を育みながら故郷へ帰るまでを描いている。
映画の画像を勝手に載せると著作権侵害になるので,webリンクを張っておく。映画の詳細についてはそちらを見てほしい。
・E.T. - allcinema <http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=1709>
・E.T. - KINENOTE <http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=675>
・20周年アニバーサリー特別版公式ホームページ (英語) <http://www.universalstudiosentertainment.com/et-the-extra-terrestrial/>
ちなみにE.T.とはエリオットが,かわいらしくもありグロテスクな宇宙人につけた名前だ。本来はExtra(外)-Terrestrial(地球)の略で,単純に「宇宙人」を意味する語だ。
主人公のE.T.は宇宙人であり,当然英語が話せない。エリオットらとコミュニケーションをとるうちに,徐々に人間の言葉を覚えていくが,それでも最終的に話せる言葉は5つほどなのだ。この映画の英語がわかりやすい理由はここにある。
1. "Ouch" 「痛い」
E.T.は故郷の星と通信をしようとして,エリオットの家のガレージにあるものをかき集める。"Ouch"は,その中にあったノコギリの刃でエリオットが指にケガを負った際に発した言葉だ。E.T.はそれをまねて"Ouch"と言いながら,不思議な力でエリオットの傷口を治してしまう。
2. "E.T. phone home." 「E.T.ウチにデンワする」
エリオットは家のキッチンで,E.T.に「ここがボクの家(home)だ」と教える。E.T.はあちこちを歩きまわり,置いてあるものに興味を示し,やたらと触りまくった。その中で特にE.T.の目を引いたのが電話機だった。これがあれば故郷の星と連絡が取れると考えたのだ。エリオットが"phone"という言葉を教えるとE.T.は,"E.T. phone home"と言って,故郷からの迎えを呼びたい気持ちをとエリオットに伝えた。
3. "Be good." 「いい子でね」
E.T.は家中を歩きまわって,エリオットの手に負えない。このままでは家族に見つかって,大騒ぎになってしまう。そう思いながら必死のエリオットは,E.T.に「おとなしくいい子にしていて」と言うのが精一杯だった。
4. I'll be right here. 「すぐに戻るからね」
この表現は「ターミネーター」で有名になった"I'll be back."「また来る」と意味はほぼ同じだ。ここでは,エリオットが「すぐに戻るからね。待ってるんだよ」とE.T.をなだめようとしている。エリオットがE.T.に手を焼いている間に,お母さんが帰ってきてしまったのだ。 この表現は直訳すると,「私はまさにそこにいるでしょう」ということになるが,場合によっては「ボクはずっとここにいるからね」という意味で使うこともできる。
5. "Come." 「おいで」
街はハロウィーンの仮装をする人々で賑わっていた。エリオットたちはE.T.に衣装を着せ,外に連れ出した。今日こそE.T.の故郷と交信をしよう。「おいで。」エリオットはE.T.を連れて山の方へと向かった。そこには怖い野生のコヨーテが住んでいるのだが…
◆そして感動のエンディング◆
ここまでかなりネタバレ的に説明をしてきたが,エンディング,つまりE.T.との別れの場面を,せひ字幕なしで観てほしい。E.T.が地球で覚えた言葉を,実に絶妙なタイミングで使うのだ。きっと内容がほぼわかると思う。そして少しでも感動できたり,字幕や吹き替えなしの英語のままで映画が観れたことを喜んでもらえたら,私もとても嬉しいと思う。