« 【第168回】一期一会 | メイン | 【第170回】私のなかの遊学館高校 »

2011年2月 2日 (水)

【第169回】児童書(Fantasy)のすすめT. K. (英語)

  ハリー・ポッターシリーズの最終章の映画が公開され、後編が待ち遠しいこの頃です。
私は、生徒から「先生のおすすめの本は?」と聞かれると、このハリー・ポッターにも影響を与えているとされる、ル・グヴィン作の「ゲド戦記」をすすめています。

  ハリー・ポッターは、確かに読んで本当に面白いのですが、ずっと手元に置いて何度も読み返すというよりも、どちらかと言うと、お楽しみの要素が強いです。
一方、同じ児童書(Fantasy)でも、「ゲド戦記」や、J・J・トールキンの「指輪物語」、ミハエル・エンデの「果てしない物語」、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」などは、
一度出会って惹かれたら、とても長いおつきあいになる可能性が大きいです。
それは、どの本も独自の世界を持ち、読み手の人生観や世界観に応じた展開をしていくので、読み返すたびに異なる面が輝きを見せてくれるからです。

  「ゲド戦記」は、5年ほど前に、魔法使いゲドの弟子である、
アレンを中心とした映画が上映されたので、本の名前は聞いたことがあると思います。
全6巻あり、そのうち最初の3巻までで、ゲドの魔法使いとしての生涯が完結しています。
もし興味がわいたら、手に取ってもらえると嬉しく思います。

  この作品の中で、ゲドは、少年期に自分の能力に目覚め、魔法を学び、その力を大いに発揮していくのですが、絶えずつきまとう影におびやかされ、追いつめられて、最後にその正体を知った時、自分とは何者なのかを認識する、というのが第1巻です。
ここで作者は、自らが創り出したアースシーという世界で、海と山の豊かさ、人間の賢さと愚かさ、太古からの生き物である竜とのつきあい方、さらに「言葉」そのもののもつ計り知れない力、などを飽きさせず語っています。
ゲドが「大賢人」に到達するまで駆け抜ける様子は、「児童」でなくとも、年齢を問わず引き込まれると思います。
いつでも手にして、その世界に入り込んだ時が、ゲドと行動を共にする適齢期なのだと思います。

  もう一冊紹介したいのは、やさしく読めて、深い味わいのある、佐野洋子の「百万回生きた猫」で、これは絵本なのですが、大人になっても読んでもらいたい作品です。
みなさんは、魅力的な猫の姿を、きっとどこかで目にしたことがあると思います。
この猫を通して作者は、人が「本当に生きること」の意味を示唆しています。

  「児童書(Fantasy)」には、不思議な万華鏡のような世界が潜んでおり、是非一度「不思議の国のアリス」のように、rabbit hole ( ウサギの穴 ) に入り込んでみて下さい。