【第82回】君のハートに金メダルを尾谷 力 (地歴・公民)
先日帰宅すると、五歳になる娘の様子がなんだかおかしい。いつもはわけもなくはしゃぐ子なのになんとなく元気がない。
妻の顔を見て、「どうしたの、何かあったの?」と声に出すことなく聞いてみた。妻も私の言いたいことが分かったらしく、そっと「後でね」とのこと。
しかし、その直後原因が分かりました。娘が『私、縄跳びきらい』と半分泣きそうな顔で話しかけてきたのです。
娘:『○○君は14回も跳べる』
私:『佳保(娘の名前)は何回跳んだの?』
娘:『…』(また泣きそうな顔)
妻:『また練習しようね』
娘:『何回やってもできんもん。もうせん、絶対せん』(逆に怒った顔)
私:『もう一回だけ、パパに見せて』
娘:『エ~』(しぶしぶ縄跳びの準備を始める)
その後、妻が説明してくれました。
この間から幼稚園で縄跳びの練習が始まったこと。娘曰く、何回練習しても2回しかとべないこと。クラスのお友達は多い子では10回をこえて跳べ、○○ちゃん(うちの子の仲良し=ライバル?)も6回跳べること。跳んだ回数によって先生にシールを貼ってもらう競争をしていること(うちの子のシール1つ。つまりなんとか1回は跳べただけのシールしか持っていない)。
娘は準備が終わって私達が見ているかどうかの確認もなく猛然と縄跳びを始めました。嫌だと言いながらやはり悔しいのでしょう。しかしその様子は「ドタバタ、ドタバタ」。
なんとか跳ぼうと頑張っているんだけど、素人の私が見てもちょっと回数を跳ぶのは難しい感じです。妻も困った様子で『どうしたらいい?ちょっと見てやって』と言っています。
その日から、娘と私の特訓の日々が始まりました。
数日後、『パパ、見て見て!』と娘が飛んできました。娘の胸には誇らしく先生お手製の金メダルがかかっています。裏側には114回と縄跳びを跳んだ回数と今日の日付が記されています。スタートの凹みが大きかった分喜びも大きいのでしょう。金メダルをいつまでも離しませんでした。
私達両親としては、今回の経験をこれからの彼女の人生に活かしてほしいです。
と親ばかはさておいて、
今回もまた娘に教えられました。大切なことは諦めないこと。卒業生を送り出した後また新しい年度が始まります。
今年は、授業も部活動も…。いや、今年こそは…かな。
今年こそ、「やればできる」、そんな経験をクラスの生徒や部員達と共にしたいな。
少しだけ暖かくなった三月の風に吹かれながらそんなことを考えたある日のことでした。