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2022年11月10日 (木)

【第755回】「少しの成長」清水 汐音 (国語)

 大切なものを大切にする
 当たり前のことが出来ている人はどのくらいいるだろう?

 ある尊敬する女性が、最近呟いていた。


 一人暮らしを始めて3年。変化したことは多いが、一番は家族との距離だろう。毎日顔をあわせ、わざわざ会いに行かなくてもそこにいる生活から、会いに行かなければ会えない生活になった。正直、実家で生活しているときは「家族の大切さ」なんてものは感じていなかったと思う。距離が近すぎたのだ。幼いころから喧嘩は絶えなかったし、高校生になれば自分で精一杯。大学生になっても、まだまだ自分の幼さは変わらず、感謝の言葉を口にすることは少なかったように思う。

 一人暮らしを始めて自分で全てやるようになり、祖母や母のありがたさを痛感した。実家に戻れば、これ持っていきなとおいしいものをもらったり、ご飯に連れて行ってくれたり、他にも様々な形で愛情を注がれていることに毎回気づかされる。「お母さんみたいなお母さんになりたい」なんて言葉には全く共感できなかったが、今なら分かる気がしている。
 帰るたびになぜか喜んでいる妹もいるし、弟はある日突然髪の毛がアフロになっていたり、ピンクになっていたりする。その「いつも」が私を安心させるし、また帰ってきたくなる。私にとって家族は「大切なもの」だ。

 そんな家族を大切に出来ているのかと問われると、まだ胸を張って言えるほどにはなれていない。実家に帰るとやはり甘えてしまうし、感謝を改めて伝えるのもなんだか照れてしまう。まだまだ立派なプレゼントを渡すこともできない。反対に最近、祖母に旅行に連れて行ってもらい、いつまで元気でいてくれるのかななんて考えたりもした。
 来年からは、一人暮らしをやめて実家に戻る予定だ。今の気持ちを見失わずに、自分なりの「大切にする」を表現していきたい。