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2021年2月18日 (木)

【第668回】 「ランドセルを知らない子どもたち」K. M. (英語)

 みなさんは「ランリック」というものを知っていますか?知っているあなたは京都府あるいは滋賀県出身の人でしょう。あるいはかなりのカバン通?
 そうです。これはカバンの一種です。ではどのようなカバンでしょうか。名前を見て何となく想像がつきませんか?正解は「ランドセル+リュック=ランリック」です。ちなみに「ランリック」は商標登録された商品名で、私たちは「ランリュック」と呼んでいました。
 去年私の息子が小学校に入学しました。入学前にランドセルを買うことになり、お店に行ってまず値段にびっくり!そして実際に手にしてみてその重さにびっくり!噂には聞いていたけれど、こんな重たいものをこんな小さな子どもに持たせるなんて!!「ランリュック」なら軽くて安いのになあと、思わず「ランリュック」を思い出しました。あの頃はあんなに嫌だった「ランリュック」だったのに…。
 実は京都府内の多くの人がランドセルを使ったことがありません。その代わりに「ランリュック」なるものを使っていました。それが学校指定のカバンだったのです。「ランリュック」は阪神タイガースカラーの柔らかい素材でできたリュックサックです。確かに軽くて使いやすいのですが、ダサい。とにかくダサい。テレビドラマなどに出てくる小学生が背負っているツヤツヤのランドセルがとてもうらやましかった。なんで私たちはこんな変なカバンなんだろう。そもそもランドセルは本当に実在しているのだろうか。実在しているならなぜ私たちは使えないのだろうか。6年間もやもやしながら「ランリュック」を使っていました。
 大人になり、誰かと話している時に「ランリュック」は全国でも京都府と滋賀県でしか使われていないことを知り衝撃を受けました。あんなダサいカバンを使っていたのはやはり私たちだけだったのか、と。

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 そして、いよいよ自分がわが子のために通学用のカバンを買う番になり、「ランリュック」の素晴らしさに気づかされました。安くて軽い、その上丈夫。なぜこのような良品が全国に広まらないのか。とはいえ、他の子とはまるで違うカバンをわが子に強要するのもいかがなものかと思い、本人の意向を尊重して、結局はランドセルを購入しました。ちょっとしょんぼり。
 調べてみると、今ではちょっとおしゃれなタイプも売っている様子。しかもここ最近は埼玉県や福岡県などでも採用している小学校があるのだとか。
 いつも身近にあって便利だけど、なんだかぱっとしなくて好きになれないもの。そこにあるのが当たり前すぎて、ありがたみを感じられなくなったもの。皆さんの周りにもそういうもの、ありませんか。子どものころの私にとって「ランリュック」はまさにそのようなものでした。
 若い子たちと話していると、石川県は田舎だから嫌だ、方言がダサい、という子がいます。私も若いころはそうでした。けれども、自然豊かな石川県だからこそできることや食べられるものがあります。「~まっし」や「~じ」といった金沢弁特有の柔らかな語尾などは心地よい響きです。
 自分にとっては当たり前にそこにあるけれど、何だかカッコ悪いもの。視点を変えて見てみると、その中に「良さ」や「美しさ」「カッコよさ」が潜んでいるかもしれませんよ。そういうものに気がつくと、人生が今よりちょっとおもしろいものになるかもしれませんね。