【第568回】 幼児教育(美術)に携わって光谷 和子 (芸術)
私は子どもの頃から図画工作が好きでした。そのまま好きなことをしつこく続けていると美術の先生になっていました。もちろん大人になった今でもモノを作ることが好きで、さらに勉強して扱える材料や技法が増えました。私の専門分野は油絵ですが、銅版画や透明水彩画、ガラス造形や陶芸でオブジェを作ったりもします。どれも楽しいです。そんなある日のこと、創作するのが楽しい・大好きな子ども達の為の居場所を作ろうと思い、子ども達に絵や工作を教えることにしました。15年前のことです。毎回違う技法で平面や立体などの作品を作ることを目標として、1年間に約20通りほどの教材を考えます。それを毎年続けていますので、かなりの数の教材ができました。それと同時に、その教材における子ども達の反応や注意点なども覚えています。そういう現場の反応や経験を、ちょうど幼児教育の美術の授業(3年)を持っていますので、技法と共に伝えていきたいと思います。
また、数年前にとある園から造形活動の指導の相談がありました。幼児の情操教育(美術)に本格的に取り組みたいとのことです。そこで私は、年少児から始め、年長児で終結するような表現活動の3年計画のプログラムを組みました。3年計画の集大成は最後に油絵を描いて完成です。そのプログラムの結果、とても良い成果が現われました。作品を公的な場所で発表するたびに評判が上がり、先生方も子ども達も自信がつき、活気ある園になりました。そういうことをしていると、他の園からも相談を受けるようになりました。表現活動によるポジティブな効能が目に見えて現れたかな、と思い嬉しく思います。昨年は90人ほどの5歳児が油絵を描きました。「ボクは油絵を描いたことがある」という特別な経験は、5-6歳の人生の中で楽しく脳裏に刻まれ、1つの自信になったと思います。これからの人生も豊かに歩んでほしいと思います。
ところで、園という場所柄、幼児教育の卒業生と現場で必ず再会します。みんな立派に先生らしくなって担任をもって子ども達を率いてがんばっています。職員向けの技法講習会の中では「あ、これ授業内でやったことあります。懐かしい」とか、「いま4歳児の担任をもっています。この月齢でできる立体的な活動はなんですか?」などそれらしい質問もするなど、彼女たちの成長も感じられ、私にとっては楽しい時間×2となっています。
年中児 モノプリント技法
年長児 油絵技法