2026年1月15日 (木)

【第922回】「自分観察してみませんか。」西村 美恵子 (英語)

 新学期が始まって最初の授業で、私は名乗った後すぐにテキストの話とどんなふうに授業をすすめるか、成績はこんな風にして付ける等々説明して授業に入ります。すると生徒の誰かが決まって“自己紹介は?”と尋ねてきます。それで“名前は名簿に書いてあるし、後はそのうちわかって来るから今はいいです。”と私。最初の自己紹介にあまり期待していません。みんな何を語ってくれるのだろうか?クラスでの自己紹介で。
 それでは私は一体何が聞きたいのかといえば、――あなたはどんな人ですか?(あなたの長所・短所など)、それとあなたの好きなことは何ですか?(趣味とまでは言えなくても、それをしているとワクワク、ドキドキできるもの)、そして将来どんなふうに生きていきたいですか?などです。私が気になるところはそのようなことなのです。別にこれらに全部答えてほしいのではなく、その人について考えるヒントになるような事でいいのです。これらは担当クラスの生徒だからではなく、初めて会う誰に対しても持つ関心であると思います。露骨にそのようなことを初めて会う人に尋ねはしませんが、尋ねられて即答できる学生・生徒は少ないでしょう。(そのようなことを尋ねられる機会がなかったでしょうから。)でもこれからはそうではありません。高校を卒業して進学するにしろ、就職するにしろ、面接や小論文試験ではこのような質問にたくさん出会うはずです。一応何を尋ねられても困らないように準備が必要です。その第一歩が、自分観察です。
 これまでの自分を省みたり、今の自分を見つめてください。自分のことは自分が一番よく分かっているはずですが、それを言語化するためには外から自分を見る目が必要ですし、独りよがりにならないように、周囲から自分がどのように見られているかを考えることも大切です。そのためにも周囲のひとたちとの対話も欠かせません。そのように自分自身を十分観察して自身の全体像を自分の言葉で表現できるようにしましょう。これは単に何かの試験対策ではなく、生きていくうえでどんなときでも必要になってくることです。よく言われる、自分を見失った時、自分探しをする時、人間社会における生き辛さに負けそうな時、等々。時々立ち止まって、自分観察をして、いろいろと考えてみてください。例えば悩みや辛いことがあったら、何が自分を苦しめているのか知ることが大事です。その本質を見極めることが解決への近道です。自分自身をよく知ることが一番です。
 そしてもう一つ大切なことは、観察力を高めるためには良い目を持たなければなりませんが、そのためには日本や世界で起こったこと、今起こっていることなどにも関心を持ち、多くの人の考えを聞き、自分の意見を持つことです。自分を磨くことができるのは自分しかいませんから。自分観察をして、自分を理解して、もっともっと自分を磨きましょうね。

2026年1月 8日 (木)

【第921回】「いやしけ吉事」N. Y. (国語)

『 新(あらた)しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の

いやしけ吉事(よごと) 』

新しい年の初めの初春の今日降る雪のように、
吉事(良い事)もたくさん積もれ

 大伴家持が因幡の国司となって赴任した元旦の宴席で詠んだ歌、万葉集4516首の最後の和歌として収録されている。古来元旦に降る雪は縁起が良いことの象徴とされていて、そのことと勢力を増す藤原氏に対し、衰退していく大伴一族の運命と自身の不遇を憂い、良い方へ向かうよう願う家持の気持ちが詠み込まれているとされる。この歌が詠まれた新年は、元日と立春が重なるさらにめでたい年であり、家持のより一層の思いが重なる。

 2024年元旦の能登沖地震から2年。復興への道はまだまだ遠く、ゴールが見えていないのが現状である。実家への帰途、車窓から見える風景は私が幼少から慣れ親しんできたものとは掛け離れていて、まだ手付かずの家屋や崩れた山肌、地割れしたままの道路、更地になった土地…目にするたびに胸が痛む。20260108_2
それに加えて震災に伴う人口の流出…課題は山積みである。本校生徒にも自分自身を含め、お身内や知人に被災された方が多くいる。それでも救われるのは少しずつ状況が前進していることと、被災地の方々が明るいことだ。メディアで取り上げられることは賛否両論あるかと思うが、話題に上らなくなれば他人事として忘れられてしまう。被災された方々の今の声を見聞きすることは『時』が持つ重さを再認識させてくれる。「あとで」や「また今度」は二度とないかもしれない。だからこそ今を大切にし、巡ってきたタイミングで後回しにせず、やるべきことをやらなければならないと強く思う。
 1200年前の家持が詠んだ和歌のように、人々にたくさんの『吉事』が重なることを願いたい。

2026年1月 1日 (木)

【第920回】「実験」中村 裕行 (地歴・公民)

 学校の授業で実験といえば、理科を連想する人が多いと思う。ただ、私が教える公民科の新科目「公共」にも多くの実験が登場する。それは思考実験とよばれるもので、「トロッコ(トロリー)問題」が有名であり、教科書などにも紹介されている。

 「トロッコ(トロリー)問題」とは、1967年にイギリスの哲学者が論文に発表したのが始まりで、現在ではこのように紹介されることが多い。

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 <フリー素材から転用>
制御不能のトロッコが線路上を暴走してくる → あなたは線路の分岐点にいる → そのままトロッコが進めば線路の先にいる5人の作業員が命を落としてしまう → ただ、あなたが分岐点にあるレバーを引いてトロッコの進路を変えれば、5人の命は救われるけれども新たな進路先にいる1人の作業員が命を落としてしまう
 → あなたはレバーを引くべきだろうか?

 なかなか現実には起こり得ないことだが、他の事例として紹介されるトリアージ(大災害などの発生現場で、負傷者に救命の可能性を示す色分けされたタッグなどを付けて治療に優先順位をつけること)の是非などは現実に起こり得ることとして関心も高くなる。

 その他、私達の身近では、道路の車線規制を一定時間だけ変えてみたり、役所の受付時間を一定期間だけ変えてみたりなど、社会実験とよばれる実験が行われている。昨年(2025年)9月には鎌倉市で、スラムダンクの聖地を訪れる観光客と地域住民とのトラブルを避けるため、市が写真撮影スポットを仮設して誘導するという実証実験が4日間行われた(実験結果は鎌倉市のホームページに掲載)。おそらく関係者などから、この問題を解決するためにはこのような対策を講じてみればという提案があり、実験に至ったのであろう。また、9月下旬にはトヨタ自動車が静岡県裾野市で、次世代技術の実証都市「ウーブン・シティ」をスタートさせた。こちらはまず関係者2,000人ほどが実際に生活し、2026年度以降に一般の受け入れも見込むという壮大な実験である。

 実験を重ねることによって、新たな発見・発展が生み出されるかもしれない。これからの生徒達には、身近な「公共」空間で起こり得る難題を解決するためにはどのような実験を行えばよいか、といった力を身に付けることも求められるだろう。

 まずは、個人的な実験を行ってみてはいかがでしょうか。通学路を変えてみる、勉強方法を変えてみる、話しかける人を変えてみるなど、実験テーマは多種多様にあると思います。その先に、新たな発見があるかもしれませんよ…

PS これこそ理科(生物)の領域ですが、最近話題になっている本「僕には鳥の言葉がわかる」はまさに壮絶な観察・実験の集大成で、とても面白く読めました。


~2026年が皆様にとって良い年となりますように~

2025年12月25日 (木)

【第919回】「【遊学講座】34年の歴史に刻まれた、ある生徒の「気づき」 」中川 都 (国語)

 本校には、全国的にも珍しい独自の授業があります。毎週土曜日に行われる「遊学講座」です。 資格取得、外国語、趣味・教養、そしてスポーツ。多彩な講座には、校外から第一線で活躍される専門の講師の方々もお招きし、生徒たちは自らの興味関心に従って「自分だけの学び」を選択してきました。その遊学講座が、34年目を迎えた今年度をもって、その歴史に幕を閉じることとなりました。
「遊学講座」では、毎年最後に生徒に感想文を書いてもらいますが、その中で「けん玉講座」を受講している生徒が語ってくれた言葉が印象に残りました。


■ 「誰より上手か」よりも大切なこと

 その生徒は、もともと「けん玉1級」の腕前で、講座の始めの頃は余裕を持って取り組むことができていたようです。しかし、講師の先生の鮮やかな技、そしてその向き合い方に触れる中で、彼はこう思ったようです。
「自分は1級を持っていて、皆より上手だと思っていた。でも、先生の技を見て気づいたんです。大事なのは誰より上手いかではなくて、自分が少しずつ上手くなっていくことなんだ、って」
この言葉に、私は教育の原点を見た気がしました。 他人と競うための技術ではなく、昨日の自分を超えていく喜び。その生徒は、けん玉を通して「自分を育てる」という本当の意味を見つけ出していました。
この生徒のように、教科書のない教室だからこそ得られた学びが、他の60の講座にも溢れています。 資格取得に挑む者、伝統文化に触れる者、スポーツに汗を流す者。講師の先生方の背中から学んだのは、専門知識だけでなく、物事に向き合う「姿勢」そのものでした。


■ 34年間の感謝を込めて

 土曜日の2時間。 そこには、ただ純粋に自分の「好き」や「向上心」と向き合う、豊かで贅沢な時間が流れていました。この34年間で、たくさんの生徒が、彼のように「大切なこと」に気づき、卒業していったと思います。今年度で遊学講座という形は幕を閉じますが、生徒たちが手にした「気づき」は、これからの長い人生を支える確かな力になると信じています。

 これまで本校の教育に情熱を注いでくださった講師の皆様、そして素晴らしい学びを見せてくれた生徒たちに、改めて感謝を伝えます。本当にありがとうございます。

2025年12月18日 (木)

【第918回】「継続は力なり」中川 光雄 (保健体育)

2012年1月19日 (木)
【第216回】 日記や日誌の効果  中川 光雄 (保健体育)
皆さんは日記や日誌を書いていますか?
私は五年連用日記を愛用しています。
個人的なことから始まり、野球部における練習内容、時間、ミーティングに対する選手の反応、効果など様々です。
これを毎日、毎週、毎月、毎年積み重ねて5年目になりました。
過去を振り返り、現在との些細な違いを見いだし、そこから未来や出来事の本質が見えてくるようになりました。

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(愛用中の五年連用日記。内容は秘密なのでぼかしてあります。)

皆さんも日記や日誌を愛用してみてください。
日記や日誌などにある些細な出来事を振り返ることで、折に触れて自分がなすべきことを見通す洞察力が養えると思います。



上記は13年前に書いたコラムです。
私は現在も日記は継続しています。1日の出来事や残しておきたいことが五年連用日記では足りなくなり、三年連用日記に進化しました。

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継続は力なり。