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2011年8月25日 (木)

【第196回】 学ぶといふことK. M. (国語)

暑さも一段落して、夏休みも終盤となりました。
宿題にもめどがついたでしょうか?それとも追われているのでしょうか…?
しかし宿題だけでなく、補習・部活・受験勉強・奉仕活動…など、
長い休み中も暑さに負けず、生徒たちは毎日様々なことに取り組んでいます。

ところで話は変わりますが、「花札」という遊びをしたことはありますか?
日本に古くからあるカードゲームの一つです。
知らない人もいるかもしれませんが、今やインターネットや携帯で無料ゲームにもなっているので、見たことがあるという人も少なからずいるのではないでしょうか?

長い休みだから日本の伝統的な遊びに触れてみては…とご紹介したいわけではなく、
私自身も、遊び方はあまり詳しくありません(すみません)。
しかし、もしその札が見られるのであればちょっと見てみてください。
いかにも日本的な、きれいな絵が描かれていますよね。

花札には、札が全部で48枚あり、それを一年12カ月に分け、月折々の花鳥風月の絵柄が4枚ずつ描き込まれているそうです。
例えば、一月は「松に鶴」、二月は「梅に鶯(うぐいす)」…など。
その中に、「菖蒲(しょうぶ・あやめ)」の絵が入っているものがあります。
それにさらに描かれているものがあるのですが、何か分かるでしょうか?
水の上に板のようなものが渡っていて……それは「橋」です。
正確には、「菖蒲(あやめ)に八つ橋(やつはし)」という名の五月の札です。

「八つ橋」というと京都の有名なお菓子を思い出しますが、それとは全く関係なく、
これは、幅の狭い板を数枚つないでかけた橋のことで、蜘蛛の足のように幾筋にも流れる川の上を八枚の板で渡したという、愛知県の地名に由来します。
そこは「カキツバタ」という花の名所で、実際には「菖蒲」ではないのですが、二つは見た目が似ていて、ぱっと見ただけでは区別が難しいようです。
しかしながら「いずれアヤメかカキツバタ」というように、ともに美しさは同じです。
そこで、花の名が「カキツバタ」に「八つ橋」…何か聞いたことがあるぞと思う人はいるでしょうか?

「古典」を勉強していると必ず目にする平安時代の作品、『伊勢物語』。この作品の一節。
男主人公が、京を追われて東国へ下る途中、ここ「八つ橋」で都に残してきた妻を思って「カキツバタ」の五字を歌に入れて詠むという場面…。
実は五月の札は、この話がもとになっています。この小さな一枚の絵の中には、物語が入っているのです。

『伊勢物語』のこの場面は、多く芸術作品の題材にもなり、江戸時代に活躍した絵師・尾形光琳も、作品に取り入れています(写真でご紹介できないのが残念ですが…)。
しかし芸術とまではいかずとも、「花札」のように我々の身近なところにまで、千年以上も前の日本人の感覚が当たり前のように残り、入り込んでいるのです。
現代を生きる我々にとって実感はあまりありませんが、
平安時代の日本人が「これ、いいね!」と思った感情が、江戸時代、そして現代に至るまで、千年以上も日本人の中にあり続けてきたということではないでしょうか?

私は、国語の中でも「古典」を担当することが多く、毎年必ず生徒から、「なぜ古典を学ぶのか?」と問われます。
受験のため?日本の伝統・文化だから?カリキュラムで決まっているからしかたなく?
人によってさまざまな答えがあると思いますが、一つには、このように日本人の考え方を学び、日本人的な認識・感覚を知る学習であると思います。

世の中は、科学技術が発達し、とても便利で豊かになりました。
しかし、その技術を生み出すのも人間であれば、利用するのも人間です。
その技術のスペシャリストになることは、もちろん大切で必要なことだけれども、
それが役に立つのかどうか、使ってよいものかどうか、是か否か……、
抽象的ですが、そこで起こる問題やさまざまな選択を、解決したり決定したりする最終的なところが、人間の持つ感覚や感情なのです。
それを磨くために、いろいろな考え方や感情を知ることが必要なのだと思います。
それを学ぶのが、「古典」などの、将来役に立つのかどうか、一見しただけではすぐにはわからない科目なのだと、今、激動の2011年を過ごしながら思うのです。

「伊勢物語」が「花札」の絵になっていることを知るのがそうなのか?…と思われるかもしれませんが、そういう直接的なことではなく、学んだことが感覚や感情の教養となって身に付いていく…そういうことなのだと思います。

ちょうど夏の疲れも出るころではないでしょうか。
再び学校が始まる前に、ちょっと一息入れて、なぜ勉強するのかをふと考えるのもいいかもしれません。

2011年8月18日 (木)

【第195回】 「得意」と「苦手」K. N. (数学)

夏休みです。受験生にとって勝負が決まる時でもある。勉強しましょう。

この間、その受験生と話をしていて、ふと、数学の確率にまつわる話を思い出した。

例えば、
「英語は得意だけど、数学は苦手」
という生徒がいて、彼(または彼女)は
「僕は(私は)文系だから」
と言ったりするのだけど、話をしていると、言うほど「文系」ではなかったりする。
もうちょっと勉強すれば、数学ができるようになりそうに思える。

では、その「得意」と「苦手」の違いは、どこから生じるのだろうか。
一応(?)、数学の教師なので、確率論を使って考えてみた。

袋に白と黒のボールを入れて、(袋の中を見ずに)ボールを一つ取り出し、色を確認したら元に戻す、という(どこかで見たような)「ゲーム」を考える。

最初、袋の中には白のボールと黒のボールを1つずつ入れておく。

袋からボールを取り出したとき、白のボールと黒のボールの出る確率はともに 1/2 だ。
そのまま元に戻してしまえば、何も変わらず、白黒の確率は 1/2 のままだ。

そこで、袋からボールを取り出したとき、
その色が白だったら、白のボールを1個増やして袋に戻す。
黒だったら、黒のボールを1個増やして袋に戻す、
ことにしよう。

この操作を何回もくり返すと、袋の中の白黒のボールの出る確率はどうなるだろう。

確率論の難しい計算をすると、白黒の出る確率は、一定値に近づくことが知られている。
ちょっとややこしいけれども、その「一定値」は、試行の度に違う値になる。白黒の確率が1/2に近付くこともあれば、白の確率が1/3に近付くこともある、ということだ。

平たく言えば・・・

本屋に行くか、飲み屋に行くかを最初のうちランダムに決めていても、そのうち、どっちに行くか偏ってきて、気が付いたら「飲み屋ばっかり」になってしまう人、逆に「本屋ばっかり」になる人、のように、人によって現れる結果は違うけれども、人を決めると、その人が本屋に行く確率は一定値に近付く、

ということだ。

先の「得意」と「苦手」が生じる理由を、この確率現象に当てはめると、先の受験生は
たまたま何らかの理由で「英語を得意」だと思い始めた結果、英語の勉強をする機会が増えて、英語が得意になっただけ
なんじゃないだろうか。

上の「ゲーム」で言えば、たまたま、最初に「白(英語)」がたくさん出た結果、「白(英語)」の出る確率(「得意」だと思う場面)が増えて、白の確率が大きくなっているだけ、なのではないだろうか。

「そうだ」と言い張る気はない。
そうではなくて、そういう単純な理由であるなら、意識的に「黒(数学)」の出る確率を増やしてやれば、数学もできるようになるんじゃないだろうか。

教師としてできることは、そんなに多くないかもしれない。でも、

確かに、袋の中には白のボールが、かなり多くなっているけれども、
意識的に黒のボールが増えるようにしてやれば、黒の確率を増やせるのではないか

そう思って、生徒が数学と接する機会を増やすために、数学のプリントを「たくさん」作ろうと思う。

2011年8月11日 (木)

【第194回】夏休みの過ごし方小坂 英洋 (情報)

 お盆も近づき、夏休みも残り少なくなってきました。みなさん、残暑お見舞い申し上げます。
さて、夏休みといえば、生徒はもちろん長期の休みとなるわけですが、学校から誰もいなくなるわけではありません。今回のコラムでは、遊学館の夏休みを紹介します。

夏休みのスタートは、7月20日水曜日。その日から、保護者懇談会、いわゆる「通知表渡し」が始まります。私も、1クラスの担任として、懇談会を行いました。成績もさることながら、懇談会では、生徒の将来について、保護者の方の熱心な相談が多くありました。

 また、夏休みはクラブ活動が最も熱心に行われる期間でもあります。大会に参加するクラブ、遠征や合宿を行うクラブ、中にはお盆も返上して練習を行うクラブと、みんな真っ黒に日焼けをして頑張る姿が毎日見られます。

 学校内の改装工事などもこの期間に行われています。登校日には、一部新しくなった校舎に驚く生徒もいることでしょう。
 
 私たち教員は、夏休みといえど、学校でさまざまな業務を行っています。補習などは毎日実施されているため、授業を行っている教員もいます。3年生にとっては、受験シーズンがいよいよ始まるため、受験の準備に学校に登校してくる生徒もいます。特に就職希望者は、この夏が勝負です。担当の先生方も、指導に余念がありません。

 そして、毎日学校へ登校し、夏休みの宿題や、勉強の質問をしに来る生徒も多くいます。そんな生徒には、思わず「ガンバレ!!」と声をかけてしまいます。生徒と教員が学習できるスペース「ラウンジ(下記写真)」はいつも満員です。
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 こんな風に、簡単に夏の遊学館を紹介しました。

生徒諸君!

勉強は遊学館で、宿題は早めに終わらせましょう!!

2011年8月 4日 (木)

【第193回】打てよ、打てよ、ホームラン牛腸 尋史 (英語)

 7月27日、遊学館高校対金沢高校のカードで第93回全国高等学校野球選手権大会石川県大会の決勝が行われた。ご存知のように、遊学館高校は後半の追い上げで粘りを見せたが、甲子園大会の出場は叶わなかった。

私たち教員にとっても、そして生徒にとっても、県大会準決勝、決勝の全校応援は本格的な夏の始まりを告げる一大イベントになっている。だが、この行事も野球部が勝ち進んでくれてこそ実現できるものである。創部以来11年間で9回も全校応援ができているのは、他でもなく野球部員と監督、コーチの弛まない努力の証である。

普段の生活の中で、1000人が同じ場所で同じ思いを共有することなど、そうそうあるものではない。もちろん、学校生活においてもそれは同じである。グラウンドで白球を追う球児だけでなく、準決勝と決勝の1塁側では(もちろん3塁側も同じでしょうが)、スタンドで応援する野球部員、吹奏楽部、応援団、生徒たち、そして教職員もみんなが「甲子園に行きたい!」と、思いを一つに精一杯応援していた。

こんな幸せな時間を与えてくれた野球部に感謝である。