【第776回】「25期生へ」中村 ゆかり (国語)
拝啓
桜の花も見頃となり、日本中が淡い色に包まれる季節を迎えました。花開くのを待ちわびていたかのように金沢の街中も多くの人で賑わっています。
卒業から一ヶ月、25期生のみなさんはもうしばらくで新しいスタートを迎えることになりますが、毎日を充実させていますか、心と身体の準備は整っていますか。
これまでを振り返ってみると、「あっという間だったな」という思いが強いのではないでしょうか。皆さんの高校生活はまさしくコロナ禍とともにあった3年間でした。卒業式の答辞にもありましたが、入学直後の休校に始まり、分散登校、行事の中止、と予期せぬことが相次ぎました。加えて部活動でも、ほとんどの大会において中止という状況でした。授業も同様で、さまざまな活動をよりよく実践するために必要なコミュニケーションに、制限が掛けられたものとなりました。
「自分たちの高校生活はこんなはずじゃなかった」と3年間を振り返った作文の中に書かれた言葉に、誰が悪いわけでもないのですが、人として、教師としての無力さを感じずにはいられませんでした。国内外の感染に関する情報や実情に左右され、前向きになった気持ちを何度も打ち砕かれる本当に落胆の多い学校生活だったと思います。それでも皆さんのエネルギーは有り余るものがありました。できる限りの工夫をして臨んだ授業や進路決定に向けての取り組み。経験値が少ないながらも、仲間と助け合い、後輩たちの協力や先生方のアドバイスを受けて取り組んだ体育祭や学園祭。仲間と盛り上げよう、後輩たちをリードしようと行事の成功に向けて懸命でした。ときにその思いが先走り、友達と衝突したり、先生方から注意を受けたりすることもありましたが、それも皆さんには必要な経験であったと思います。
この3年間、本当にいろいろなことがあり、もどかしい思いを味わったことだと思います。未だ充分な手立てがなく、これからも何が起こるか予測のつかないのが現状です。それでも数多くの試練を乗り越えた皆さんのこれからが、希望ある前途であることを願っています。
夢見てた未来は それほど離れちゃいない
また一歩 次の一歩 足音を踏み鳴らせ!
時には灯りのない 寂しい夜が来たって
この足音を聞いてる 誰かがきっといる
敬具