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2021年9月23日 (木)

【第699回】 「拾う」中村 ゆかり (国語)

 コロナ禍に見舞われ約一年半、日々暗いニュースが続く中、オリンピック・パラリンピンクでの日本人選手団の活躍ぶりに、多くの感動と勇気を貰った夏となった。
 これまでの競技人生を4年に一度の祭典にかける各国選手のことを思うと、感染拡大の懸念はあったが、一年の延期を経て実施されたことは本当に良かったと思える。私個人としては国内開催というメリットもあってか、想定外のメダルの獲得数に正直驚いた。ただ前評判が高かった競技でメダルがとれなかったことはとても残念ではあるが…。それでも朝夕もたらされる選手の勇姿に沸く国内の様子を目にするたび、スポーツの持つ「不思議な力」を改めて感じるとともに、世界と戦うための並々ならぬ努力が実を結んだのだなぁとしみじみ思う。
 スポーツ界で輝く日本人の中でも今、もっとも注目されているのはメジャーリーグに所属する「大谷選手」であろう。高校野球は別だが、プロ野球に強く興味がない私ですら日々のニュースでその活躍ぶりを目にすると「すごいな」と感心する。つい先日、実践での活躍とは異なるところでの称賛を耳にし、勝手ながら強く親近感を覚えた。彼は試合中であっても、フィールドやベンチのゴミを拾う。「他人の落とした運を拾う」という。高校球児であったころの習慣をいまだに実践しているとのことであった。海外メディアもその振る舞いを、こぞって称えていた。
 本校の部活生たちも運動部、文化部に関係なく練習前後に校内外で清掃活動をしている。大谷選手同様、「運を拾っている」のである。大会や練習もままならず、いろいろと制限が続く中、それでも生徒たちは「元気」である。練習帰りの生徒たちに出会ったとき、私との遭遇に驚きながらも「先生、さようなら」としっかり挨拶をしてくれる。そんな生徒たちのガンバリが収束に繋がってくれたら…と願うばかりである。
 「他人が落とした運を拾う」ことで自分たちのウンキを高め、コロナに負けない学校生活を送ってほしい。