【第695回】 「最善を尽くす」中川 光雄 (保健体育)
夏の大会が終わり、新チーム始動とともに監督へ就任することになった。
2年生23名。1年生22名。女子マネージャー6名。指導者5名。合計56名で新チームがスタートした。山本先生の監督勇退で取材に来られた記者の方々から、私に「新チームはこれまで公式戦の経験が無い選手達ばかりで大変そうですね」「夏の石川県大会に参加した学校の中で登録メンバーが一番少ないですね」「選手の能力はかなり落ちるのですか」など、質問があった。新チームへの率直な感想にショックを受けた。
たしかに新チームから、夏の大会のメンバーは1名しか選ばれなかった。3年生32名居り、力もあり、団結力もあった。その中に下級生が割って入るのは厳しかったのである。でもそれはこちらの事情で、結果、「新チームは公式戦の経験が無い選手達のチーム」「能力が落ちる」と見られてしまったのは、仕方がないのかもしれない。
しかし、ショックを受けてそのままでは、言われてしまった通りのチームになってしまう。そこで、夏休みには、経験が無ければ経験をさせようと、甲子園出場常連校に練習試合を申し込んだ。すると、相手校も快く承諾してくれ、多くの練習試合を組むことができた。この1か月で絶対に選手たちは成長してくれると信じて夏休みをスタートした。
それが、コロナ感染拡大により、他校との練習試合は自粛。
8月2日石川県にも蔓延防止措置が発令された。当初の計画はすべて白紙。選手達は甲子園出場常連校との練習試合を楽しみにしていたので、残念な気持ちが表情にも表れていた。
8月3日、練習開始前のミーティングで夏休みのテーマを「最善を尽くす」に決めた。最善を尽くすとは、考えられる方法の中で一番だと思われるものを全力で行うという意味である。選手達に、このテーマを伝えると目の色が変わり、やる気に満ち溢れた表情でグラウンドを駆け回るようになった。
あれから3週間、全国的にコロナ感染の状況はまだまだ改善されていない。しかし、我が硬式野球部の新チームの状況は3週間前と比べると、長所を伸ばしながらお互いを高め合うことが出来るようになった。あきらかに成長しているのがわかる。
9月中旬から秋季県大会が始まる。この感染状況では大会が開催されるかどうかわからない。しかし、我が硬式野球部は最善を尽くし、さらなる成長を遂げる。