【第219回】 「四十にして惑わず」中村 ゆかり (国語)
遊学館高校初任の年、「生徒指導だより」に載せる挨拶文を依頼された。
『明るいクラス、元気なクラス、落ち着いたクラス…クラスにはそれぞれの雰囲気がある。そしてその雰囲気を作るのは、クラスの生徒一人一人である。みんながステキな顔ならば、素晴らしいクラスになる。そんなクラスを目指して、一人一人が持っている力を発揮しよう。』
といった内容のことを書いた。
これまで数多くの生徒の「顔」と接してきた。それぞれの生きている毎日が、それぞれの表情に現れてくると日々、実感している。落ち着いた良い表情の生徒は、毎日の学校生活が充実しているのだろう。逆に、元気が無く冴えない表情の生徒は、悩み事があったり、生活習慣が乱れていたりするのであろう。個々人に色々な出来事があるのだろうが、それでも一人の生徒が入学して卒業するまでの3年間、様々な経験を積んで確実に成長を遂げていて、「大人」の顔に近づいていく。学校という場所だからこそ、そうした生徒の成長に関わることができるのである。
あの時は、まさに生徒に向けて書いた文章だったが、この頃その初任当時の「自分」をふとしたときに、思い返すことがある。毎日多くの生徒の「顔」と接しながら、自分自身の「顔」は成長しているかどうか。孔子の言葉のように「不惑」と胸をはって言えるだろうかと。
まもなく3年生は卒業の時を迎える。この学舎で生活した日々がそれぞれの「顔」を作ってきたことと思う。この遊学館で送った高校生活で培った経験、自信を胸に更なる飛躍を遂げてほしい。そして20年後、胸をはって「不惑」であると言えるようであってほしいと願う。