« 【第634回】 「ありがとう」 | メイン | 【第636回】 「やっと元に戻った」 »

2020年7月 2日 (木)

【第635回】 「中学生、高校生のみなさんへ」松田 淳 (地歴・公民)

 今、高校3年生の『倫理』では、「青年期の課題と生き方」を学習しています。この範囲は、57歳の私にもこれまでの生き方の原点を思い出させてくれること、またこれから老年に入っていく人生においても心の若さを呼び起こしてくれることから私自身にとって大好きな単元です。
 教科書(『倫理』東京書籍)の文章がとてもわかりやすく、中学生にも理解できる表現です。教科書を作った方が、青年期に生きる中学生、高校生にエールを送っているかのように感じます。

 教科書P.12の14行目~P.13の5行目

 アイデンティティ(※)の確立に際しては、自分の体験から学ぶことと、他者の経験から学ぶことがある。実際の生活やボランティア活動などの社会参加の中で、あえてこれまで体験しなかった立場や役割、活動を体験してみること(役割実験)は、自分自身を広く深く理解したり、自分の可能性を広げることに役立つ。その一方で、一人の人間が体験できることには限りがあるので、親や親友などの身近な人物の体験や考えから学ぶことも重要である。それに賛成であるか反対であるかにかかわらず、普段の活動をよく知っている人物の考え方や生き方は、自分なりの考え方や生き方を形成する上で参考になり、生きたモデルや比較の対象となる。
 ※アイデンティティ…(中学生のみなさんにわかりやすく)「主体性」、「自分らしさ」

 教科書P.15の9行目~13行目

 自分を理解するためには、自分自身を対象化することが必要である。そのためには、自分で自分をふり返るだけでなく、自分のことを進んで他人に話してみて意見やコメントを求め、他人の指摘や忠告に素直に耳をかたむけることも有効である。また、自分が他人にどう見られ、どう扱われているかによって、友人を自分を映す鏡とすることもできる。

 このように、これからの生き方のヒントになる文章がいたるところにちりばめられています。
 ストーリーの対象は、青年期を生きる中学生・高校生ですが、卒業後の生き方、社会人になって新しい環境で友をつくるヒント、老年になっても謙虚に生きるための道しるべなど、いろいろな世代への応用として大切なことを伝え想起させてくれています。
 そうなんです。人間一人ができること、知っていることには限界があります。そうそう完璧な人間がいるわけではありません。「自分はまだまだ。」「いろいろな人に支えてもらっている。」と思えたら、自然と「ありがとうございます。」という言葉が出てきます。若い高校生と接していて、時々心の中で自分の頭をコツンと叩く気持ちがあります。「人間、偉そうにしちゃイカンな…」と。
 生徒が寝そうになっていれば自分の授業が下手なわけで。生徒に時間を守らせるためには、まず自分が時間を守るべきで。生徒に服装をしっかりしなさいと言うなら、まず自分の服装がしっかりしていなければ。生徒のみなさんを自分の鏡だと意識する。まだまだ自分自身を伸ばすために謙虚であり続けること。生徒にとって鏡にならなければ。それを気づかせてくれる担当科目です。
 中学生、高校生のみなさん。反抗期はあって当然。人として健全に成長するための通過点です。みなさん一人ひとり、その階段を上って次なるステップに入ってください。親や先生を自分の味方、アドバイザーとする。耳をかたむけ、まずは聞く。それに賛成であるか反対であるかにかかわらず、いろいろな考え方を学ぶ。私自身これからもいろいろな方々から吸収したいと思います。もちろん若い方々からも。その努力する姿勢、人が見ていなくても真面目に取り組んでいるその姿勢。大人が途中であきらめてしまうことも夢を信じて頑張り続けるその姿勢、ひとつひとつが忘れかけていることです。中学生、高校生のみなさん。自分を支えるのは自分です。自分を信じて!