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2017年10月12日 (木)

【第499回】 杭を見て… M. M. (英語)

 コーン、コーン、と中庭で杭を打つ音が響き、小さな囲いが造られていた。それを見て「あの囲いの中で動物でも飼ったらかわいらしいですね。」などと冗談交じりで話をしているとき、ふと思い出した。かつて、金城高校には愛犬部があったという話を。

― 金城高校には最盛期で親犬が6匹、子犬が13匹いたという。その頃には、高校に愛犬部があって生徒たちが世話をしていたが、シェパードは月夜に鳴くらしく、近所から「うるさい!」と苦情の電話がかかってきたそうだ。そのたびに、加藤と母の津禰が頭を下げに回った。

「加藤晃回顧録 遊学のこころ」より ―

 校舎敷地内に犬舎をつくり、生徒たちにも呼びかけ、情操教育の一環として犬舎の掃除や犬の世話、散歩、訓練などをさせた。金城女学校時代に二代目となる加藤二郎先生が、ユニークな活動で生徒たちに愛校心を植え付けたいと考え、この活動をとり入れた。ハーモニカやアコーディオンを中心としたリードバンドや大阪-金沢間の350㎞を自転車で走破する自転車隊もその活動のひとつだ。加藤二郎先生は「生徒が夢中になれるもの」を学校生活にとり入れたいと考えたそうだ。

 現在、始業前や昼休み、放課後には、当時はシェパードたちが走り回っていたのかもしれないこの中庭で、生徒たちはスペースをフル活用して部活動等に励んでいる。そう、彼らは「夢中になれるもの」を持っている!
 金城高校の生徒のときから長い年月を経ても、今も変わらぬ遊学生の姿があるとは素敵なことである。同時に、遊学生たちには学校の歴史や創始者の思いを理解し、さらなる愛校心を抱いてもらいたいと改めて感じた。

 ところで、杭を打った囲いは、中庭の中央に高く広くそびえる榎(えのき)の幹を保護するためのものだった。しかし、この榎もこの場所から長い間生徒たちを見守ってきたことであろう。

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