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2011年4月13日 (水)

【第178回】人間が地球・自然を想定するには…I. K. (理科)

 子供の頃から、ずーっと疑問に思っていること、まだわからないことがいっぱいある。
そのひとつに「真実」「本当」という言葉。
本当って何??何が本当で、何がうそなのか、と。

 私は、終戦1年後、富山県の高岡市で生まれた。
実家は古城公園のそばで、庭は公園の堀につながっていた。(今は違う)
子供時代は近所には子供がたくさんいて、皆で隣近所の家を我が家のごとく入りびたり、
走り回り、近所のおばちゃん、おじちゃんにも可愛がられていた。
もちろん、いたずらをして叱られた記憶もある。

 でも、一人でいるときも大好きであった。庭は楽しかった。
公園の堀につながっているので、堀の草カメが庭に卵を産みにきたこともあった。
庭石の孔にいっぱい小さいヘビがいたときは驚いた。トカゲの卵はたくさんあった。
直径約1cmの楕円形。やわらかくポンポンはね、ナイフで切ってみると中に小さな子トカゲがいた。

 そして、一番楽しかったのは、蟻の行列を眺めていたときだった。飽きもせず、何時間も。
 時々、意地悪をして障害物を置いてみたり、巣をほじくってみたり…。
バケツの水を巣に入れ、慌てて出てくる蟻を見ていた。

 今から、思うと、なんとひどいことを、したんだろう。
 そして、いろいろ考えていた。
 「ひょっとして、この蟻さんは私かも?」
 「蟻が私だったら、この大きな意地悪な生物はなんだろう?どう思っているのかな?」
 「水におぼれている蟻さん、可哀想だな…。何にも知らず、ただ、一生懸命歩いていただけなのに…」

 …それから、それから…
 生物にとっての、相対的な大きさの違い、時間の長さの違い、
生きてる時代の違い、違いってみんな違うんだな。
 なんて事を、いろいろ考えていた子供時代を思い出しました。

 大人になって、こんなことを学び、そして今、生徒達に、こういう話をしています。

 地球が誕生して約46億年。
38億年前に海で生命体が誕生し、最初の約30億年は単細胞生物の時代であった。
 約6.7億年前に多細胞生物が出現し、生物の大量発生や、絶滅の時期を経て、
古生代、中生代、新生代、そして現代に至っている。
 この地球生態系の中、温度や光などの無機的環境は、絶えず変化しているが、
生物の種類や数は長期的には、ある範囲内に収まっていて、バランスを保っているように見えていた。
 しかし、約500万年前、高い知能を持つ人間が出現した。
最初の人類は農耕と採集を主とする、他の生物と同じように生態系における消費者として、
自然と調和のとれたものであった。
が、その後、人類は農耕の技術や放牧の方法などを生み出し、
独自の進化を歩み、次第に生態系を作り変えるようになっていった。
 さらに、現在、人口の急激な増加、それに伴う大量のエネルギーや物質の消費により、
次第に地球は、疲弊していった。
 そしてようやく、人間は、人類の生活と地球環境との調和、自然環境の保全を考えようとした、と。

 その矢先、この3月11日に東日本大震災が発生した。
大地震、大津波、原子炉破壊。連日のテレビの報道は、惨憺たるものであった。
でもその後の、復興に向けての被災者の忍耐強さ、
謙虚さ、気使いの心に驚かされ、日本人魂を感じた。
しかし…原子力に関しては…一般人には、何もわからない。ただただ、怖いとしか。
そして、いろいろな風評が流れている。
テレビを見ていて、この言葉がよく使われていた。
 「想定外」の大地震。「想定外」の大津波。「想定外」「想定外」と。
 誰が定めた想定?なのか。  
 想定外とは…辞書で調べてみると「想定」はあった。
「状況・条件などを仮に決めること」と、書いてあった。
 想定外はなかった。

普通の人間にとっての
 時間のスケール…人間の想定できる時間は、生まれてから死ぬまでの約80年。
             1000年前は大昔、100年前も昔、それ以前は、わからない。
             本で勉強して、へー、そうなんだ、って思うだけ。
             恐竜が生きた時代、約3億年、わからない。何しろ人間は500万年。
             一人一人の人間は、30~40年前は大昔と思っている。
             地震が起こるプレートの動きも万~億年の単位である。
             この地震で、震源付近の海底が3m隆起し、24m移動したという。
             何万年かかっての、プレート内部のエネルギーの解放だろうか。

 長さのスケール…キロ、ミリまで。マイクロぐらいになると、ほとんど、無理。何しろ見えない。
             肉眼で見える分解能は0.1mm、光学顕微鏡では0.2μmといわれている。
             ナノは当然無理。可視光の範囲、可聴音の範囲は本当に狭い。

 これですべてが、真実が、分かるはずはない。
 人類は本当に他の生物に比べ、一番高い知能を持っているのだろうか?
 人間は、暗い部屋の小さな穴から外(宇宙、地球)を見て、見える範囲だけ、聞こえる音だけが、
全世界だと、真実だと勘違いしている、のでは??
 人類は、自然に対してもっと、謙虚に接していかなければいけないのでは。

 こういうことは、今までに何度も授業中に、言ってきました。
高校生はここまで、学んでいます。
 何も、進学だけが目的の授業ではなく、正しい知識を持った大人になって、
自分の子供を大切に正しい方向に育ててほしい、と思っています。
 これが、私の信念です。
 我々はやっぱり人間ですもの。若い人々の明るい未来を望んでいます。
 私にできること…今まで通り、一生懸命、授業することかな。
 …と、思うこの頃です。