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2014年10月 2日 (木)

【第346回】 留学生との時間のなかで西村 美恵子 (英語)

毎年ではないけれど、遊学館高校に米国やカナダからの交換留学生が約1年間通学する。お互いの都合(時間割)が合えば、私も彼(または彼女)の日本語の勉強のお手伝いをしている。日本語の勉強よりも、話し相手とか相談相手になる時間の方が長い場合もあるのだけれど。私にとっては、日本語を一つの言語として見直す興味深く、楽しい機会でもあるし、また自分の日本語力と英語力の拙さに打ちのめされたりもして、とても刺激的な時間になる。そして何よりも一人の人間と出会う素敵な時間なのだ。

 何年も前になるが、ある男子留学生が日本での生活をとてもよく心得ている気がして、不思議に思って尋ねたことがあった。彼曰く、「漫画で読んでいたから。」そしてたくさんの日本の漫画のタイトルを並べたてたのだけれど、残念ながら私の知っているものはなかった。彼に限らず、そのあとの留学生たちもみな日本に来るずっと前から日本の漫画を読んでいたとのこと。そういえば、ドラえもんやアンパンマンなどが世界中のテレビで子供たちが見ていると言われていたっけ。確かにのび太の家は平均的日本家屋だし、あんパンやカレーパン、天丼やカツ丼という言葉や形を見て育った子供たちは日本にやって来ても珍しいものは何もないのかもしれない。今や日本と言えば、TOYOTAやSONYばかりでなく、NINTENDOや漫画・アニメーションなのだ。ゲイシャ、フジヤマ、ハラキリが日本のイメージだったなんて知っている私が古すぎるのですね。漫画の彼はとても頭の良い生徒で、私にsmiles(s~sまで1マイルだから)ではない一番長い英単語を教えてくれた。映画メリーポピンズにでてくる呪いの言葉でSupercalifraglisticexpialidocious。彼はこの単語をスラスラと書いてくれた。降参!

 カナダからのある女子留学生は、泉野図書館の英語のペーパーバックを全部読み切りたいと言うほどのbookworm(本の虫:読書家)で小説の話でよく盛り上がったものだが、大学ではフランス語を専攻して教師になりたいと話していた。ただカナダも大学卒業後の就職は簡単ではないらしく、イギリスで就職するかもと言っていた。自分の将来をしっかり見定めている、とてもしっかりした考えをもっていた。それとよく弟の話をしてくれた。字が汚くて、単語のスペルを覚えないとお姉さんらしく心配していた。やはりカナダでも小学生は日本の漢字ドリルのように単語の練習をさせられているのだ。彼女の話の中で一番驚かされたのは、なんと彼女の母方の先祖は、海賊からイギリス海将になりSirの称号をエリザベス1世から与えられたドレイクだったことかも。(高校の世界史の教科書には必ず載っている有名人!)

 コロンビア出身で、母語はスペイン語、幼くして米国に移住して英語はもちろん堪能な女子留学生は日本語の勉強も熱心で、要領よく学習するタイプ。日本語の上達が速い生徒だった。周囲の生徒たちと仲良くなるにつれ、会話は特にメキメキ上手になり、外国語の上達には同年代の友達との付き合いが一番という典型的な例だと痛感した。彼女はバスケットボール部の部活動にも参加していたし、修学旅行や運動会等々の行事を楽しんでいた。仲間がいて初めて楽しめるものだから。私の方は、彼女の日本語クラスのテスト勉強のために、冷や汗流して漢字の書き順を示したり(電子辞書には書き順も載っています)、動詞の活用の練習を手伝ったりしたのだが、「切る」と「着る」はなぜ活用形が違うのかと質問され、絶句!(質問されるまでそのことに気付きもしなったなんて!)また彼女の質問に対して”金沢弁“だからと説明しているうち、彼女は日本語のテキストの問題を解きながら、答えは○○だけど金沢弁だと△△なんて言えるくらい金沢弁の達人になった。そんな彼女がある時「自分はこれまでコロンビア人でスペイン語を話すことに何の不思議もなかったのに、スペインと言う名の行ったこともない知らない国の言葉なのだと思ったら妙な気がした。」とポツリと話したことがあった。どうにも返事のしようがなく切ない!もうひとつ、日本からのお土産には是非ともニンジャブーツを買って帰りたいからどこに売っているかと尋ねられたことがあった。米国の彼女の周りは今ニンジャブームだとは聞いていたので驚きはしなかったけれど、忍者は何をはいていたのだろう???