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2012年4月 1日 (日)

Vol.12 新しく踏み出す勇気、意識を高く、自分を支えるのは自分!松田 淳 (地歴・公民)

〔今回の“Vol.12”は『遊学館 先生ブログ』も合算しての原稿通算No.です〕
 今回はかなり長文です。長文になる理由、思いのこもる日なのです。



 4月1日(日)朝…わがバトントワリング部の2・3年生である上級生たちはニコニコ、ワクワクしています。今日から新入生が本校バトン部での春休みの練 習に合流できる解禁日なのです。自分たちの新入部員の頃を思い出しているのでしょうか。新人たちがさわやかな雰囲気とともに春風を運んできてくれました。
 今日という日は(世間の動きとしては明日からが本格的でしょうか)新入社員が世の中にデビューする日。パリッとしたスーツを着た若い方々が街角を歩いて いると、私自身、この遊学館高校(前身の金城高校)に勤め始めた27年前の春を思い出します。私も真新しい紺のスーツに身を包み、「よし、頑張るぞ!」と 意気込んで職員室に乗り込みましたが、「おい!若いの!荷物運んでくれ!!」との一言。当時、新校舎が完成して新しい職員室への引っ越しの日だったので す。新品のスーツはたちまちホコリだらけ。母がアイロンをかけてくれたシャツも腕まくりでクシャクシャ、汗だらけでベトベト、真っ黒になりました。熱血教 師を夢見た初日はまさに体力勝負の引っ越しにベストを尽くした午前でした。(笑)  そのあと午後に開かれた職員会議の途中、外の廊下がうるさいので、会議の途中にドアを開けて、新人たる私がスポーツ部員の一群に「今、会議中だ!静か に!!」と一喝。あとでその部の顧問の先生から「あの子たちは学校からお手伝いをお願いされて働いてくれていた。」と静かに説明されました。勢い余った私 の大失敗です。今でもその子たちに申し訳ない気持ちが湧き起こってきます。
 それでも失敗続きの新入社員の私に先輩諸氏から、決して丁寧でなく、何気ない短い言葉がふと投げかけられます。「生徒と話すときには目をしっかり見て。 言葉を投げかけるのではなく、思いを伝えて話しをするように。」「一年目に“おかしい”“なぜだろう”と思ったことをずっと忘れないように。いつか変えら れるときがきたら変えるべき。自分の感性を信じて。」…教師としての今の私を形成した私自身にとっての金言名句がどんどん浴びせられます。振り返れば、最 初の3年間が勝負だと思います。最初の3年間で苦労をした人、鍛えられた人、声をかけ続けられた人、しごかれた人、多くのミスをした人、頑張り続けた人、 もがき悩み続けた人…これらすべてが、のちのちの人生の財産になると自信を持って、若い方々に言えます。生徒(部員)という次世代の若者にも今後伝えてい くことが先輩諸氏への恩返しと使命感と責務を持っています。
 さて、今日の部活の最後に部員たちに伝えることは昨日の夜からずっと考え、決めています。新人たちに伝えること。それは目標を高く持つこと。自分はどん どん伸びる人間だと信じること。自分を支えるのは自分であるということ。どれだけ強いチーム、伝統あるチームに所属しても、体制や組織や環境が自分を強く してくれるのではない。自分のモチベーションは自分で高めなければ真のモチベーションにならない。辛いことも多々あるけど、孤独になって戦ってこそ、孤独 になってこそ初めて人は強くなれる。悩むことは誰でもする。これ以上悩めないというところまで悩み切れるか…です。個人の意識が強くなってこそのチーム力 であるということ。仲間意識をまず前提に出すと、いつまでも仲間に頼って強くならない。それぞれが苦労をして、まずそれぞれが努力する。目に見えないとこ ろで。そのような一人ひとりが終結してこそ、チームが集合体として強くなる。これは決して冷たい考え方でもなく、決してエリート意識を重視しているのでな い。チーム(組織)が追いこまれたとき、結局は個人の力量あってこそチームの真価を発揮するのだと思うからです。弱い人間ほど、「チーム力が問題」「環境 が悪い」「方向を示してくれない」と嘆きます。自分自身がチームの一人である前に自分自身の力量を高めようとしているか、限られた環境の中で工夫をしてベ ストを尽くしているか、何が方向性か・今何が求められているのか・何が問題点なのか・解決する手段方法は何なのかを、高い位置・立場に立って考え想像して いるか…チームは群れてはだめです。強い個々があってこそのチームだと自分自身を前向きに思考させ行動しているかです。批判ばかり、グチばかり、文句ばか り、「~だからできない」という人間には多分どれだけ良い環境や条件が来ても、さらに次を求めるでしょう。責任を自分が背負っていないから、常にネガティ ブです。ポジティブな人間は「すべて自分が責任を背負う」「すべての結果は自分にある」という必死な思いがあるからとにかく一生懸命です。そのような人 は、目標、意識、行動、習慣を高めようと生きる姿勢が積極的で、不思議と笑顔なのです。降りかかる問題を自分だからこそ来てくれた難問だと正面から迎えよ うとします。不思議と時間がかかっても、その人が気づいていない小さな成果を積み重ねています。第三者がそばで見ていても、たくましい成長が見てとれま す。
 では次に先輩たちへ…。新人を育てるという理由で、自分を伸ばすべき練習量を減らしていないですか。前述した「チームのために自分という個人が強くなら なければならない」という考え方からすると、新人の方に全エネルギーを傾注すると、それまでのチームそのものの力量が落ち込んでしまう。新人には時々にヒ ントときっかけを与えさえすれば良い。先人たる自分自身たちが伸びなければ“ここぞ”という勝負で自分たち自身が悔いを残すことになる。勝負は新人が育つ まで待ってはくれない。新人は見て覚える・聞いて覚える・自分でやってみるべきと時には突き放してみてもよいのです。今の若い人たちの情報収集力は私たち の若いときと比べてはるかに高い。「その割に人間関係の対応力が低くなっている」という嘆きも聞こえてきますが、“決めつけ”てはならない。この“決めつ け”は自分自身の可能性をも否定することにつながります。鏡の法則です。ネガティブな思考は自分の考え方そのものをネガティブにしてしまう。こちらが新人 の能力や伸びしろを決めつけて、あきらめてしまっていることにつながります。物のとらえ方・人の見方をもっと前向きにポジティブにしましょう。新しい人 に、できない人に、まだの人に、もっと夢と希望を感じましょう。肯定的にとらえましょう。その考え方はチーム自身に肯定的な活力や“あきらめない”という 雰囲気を与えます。今を嘆く前に自分自身がどうであるか鏡に映して見るべきです。人に要求する前に自分がどれだけの努力をし、日々ベストを尽くしている か…。



どうもこの調子だと終わりそうもありません。今朝から来た新入生たちの瞳を見てさらに私の心の灯が燃え上がっています。新入生はチームに活力を与えてくれます。今いる人間は足元を振り返るきっかけにもなります。継承すべき善し悪しを分析することにもなります。
 春は、動物にも植物にも人間にも新しい息吹と活力を与えてくれる季節です。

  追記 長い文章にお付き合いいただき感謝します。(松田より)