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2011年8月18日 (木)

【第195回】 「得意」と「苦手」K. N. (数学)

夏休みです。受験生にとって勝負が決まる時でもある。勉強しましょう。

この間、その受験生と話をしていて、ふと、数学の確率にまつわる話を思い出した。

例えば、
「英語は得意だけど、数学は苦手」
という生徒がいて、彼(または彼女)は
「僕は(私は)文系だから」
と言ったりするのだけど、話をしていると、言うほど「文系」ではなかったりする。
もうちょっと勉強すれば、数学ができるようになりそうに思える。

では、その「得意」と「苦手」の違いは、どこから生じるのだろうか。
一応(?)、数学の教師なので、確率論を使って考えてみた。

袋に白と黒のボールを入れて、(袋の中を見ずに)ボールを一つ取り出し、色を確認したら元に戻す、という(どこかで見たような)「ゲーム」を考える。

最初、袋の中には白のボールと黒のボールを1つずつ入れておく。

袋からボールを取り出したとき、白のボールと黒のボールの出る確率はともに 1/2 だ。
そのまま元に戻してしまえば、何も変わらず、白黒の確率は 1/2 のままだ。

そこで、袋からボールを取り出したとき、
その色が白だったら、白のボールを1個増やして袋に戻す。
黒だったら、黒のボールを1個増やして袋に戻す、
ことにしよう。

この操作を何回もくり返すと、袋の中の白黒のボールの出る確率はどうなるだろう。

確率論の難しい計算をすると、白黒の出る確率は、一定値に近づくことが知られている。
ちょっとややこしいけれども、その「一定値」は、試行の度に違う値になる。白黒の確率が1/2に近付くこともあれば、白の確率が1/3に近付くこともある、ということだ。

平たく言えば・・・

本屋に行くか、飲み屋に行くかを最初のうちランダムに決めていても、そのうち、どっちに行くか偏ってきて、気が付いたら「飲み屋ばっかり」になってしまう人、逆に「本屋ばっかり」になる人、のように、人によって現れる結果は違うけれども、人を決めると、その人が本屋に行く確率は一定値に近付く、

ということだ。

先の「得意」と「苦手」が生じる理由を、この確率現象に当てはめると、先の受験生は
たまたま何らかの理由で「英語を得意」だと思い始めた結果、英語の勉強をする機会が増えて、英語が得意になっただけ
なんじゃないだろうか。

上の「ゲーム」で言えば、たまたま、最初に「白(英語)」がたくさん出た結果、「白(英語)」の出る確率(「得意」だと思う場面)が増えて、白の確率が大きくなっているだけ、なのではないだろうか。

「そうだ」と言い張る気はない。
そうではなくて、そういう単純な理由であるなら、意識的に「黒(数学)」の出る確率を増やしてやれば、数学もできるようになるんじゃないだろうか。

教師としてできることは、そんなに多くないかもしれない。でも、

確かに、袋の中には白のボールが、かなり多くなっているけれども、
意識的に黒のボールが増えるようにしてやれば、黒の確率を増やせるのではないか

そう思って、生徒が数学と接する機会を増やすために、数学のプリントを「たくさん」作ろうと思う。