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2008年6月11日 (水)

【第42回】新米教師からのメッセージ?尾谷 力 (地歴・公民)

 目標にしていた県総体も終わり、嫁さんに尻を叩かれつつ娘たちと本棚の整理をしました。

 部活動以外にこれといったこだわりもなく、特に趣味を持たない私ですが、「暇な時は何をしてるの?」と聞かれると、積極的に「読書です」と答えないまでも、本を読むのが実は好きです。私にとってのささやかな楽しみは、子どもを寝かしつけた後の僅か20~30分、本を読むことなのです。

 しかし、ここ数年本棚の整理をさぼった結果、棚からはみだした本が床にまで溢れ、読みたい本もなかなか探せない有様となってしまいました。

 整理していくと同じ本が3冊出てきました。2冊だったら「読んだこと忘れて同じの買ったんだ」と反省するところですが、3冊ですから「よほど読みたかったんだな」と感心していたところ、さらに驚いたことにその内の1冊は十五年前に読み終えた本でした。

 題名は『論語物語』、作者は下村湖人。なぜ十五年前に読み終えたものと判明したのかと言うと、赤線が引いてあり、感想みたいなものが書いてあったからです。教師になって3年目、教え子が国体で3位に入賞した年だったので、容易に当時の記憶がよみがえってきました。

 目を引いたのが、『自らを限るもの』と題されたお話に対する自分のコメントです。「私は力が足らないので先生の教えを貫くことができない」と嘆く弟子を、師である孔子が「精一杯やるということは、まず全力で取り組んで見ることだ。取り組んでみて力が足りないのであれば、志半ばで倒れる。倒れてみてはじめて力が足らなかったと判る。お前のように、倒れもしないで力が足らないなどというのは、全力で取り組んでいない証だ」と、励ますお話です。その横に15年前の私は、『努力の結果の国体3位。今の気持ちでやれば全国で勝負できる。自分の力を限らず取り組む』とコメントしていました。

 このコメントは、私をハッとさせるに十分なものでした。それは、一昨年まで6連覇してきた県大会に、昨年は僅差で負けてしまい、現在も狂ってしまったチームの歯車を戻せないでいるからです。そんな私を見かねた神様が、25歳当時の私を通じて、「元気出せ」とでも言われているのかな?などと思いつつ、しばらく整理を忘れて読みふけってしまいました。

 今回偶然再び手にした15年前の本ですが、今だからこそ素直に読み返すことができました。そして、どうしても全国大会に出場したかった、そのためにはどんな努力もいとわなかった15年前の気持ちを思い出し、また、25歳の私から、メッセージをもらったような気がします、「自らの力を限るな」と。

 何もないところから始まった活動、ただがむしゃらな毎日の積み重ねでここまでくることができたのです。大切なことは現状ではなく、何があってもやり通す気持ちだったのです。教師になって3年目の私に、今年18年目の私が改めて教えられた気持ちです。

 さて、このコラムを書きながらも、明日の早朝練習が、生徒たちが待っています。初心に帰ってグランドに立ちたいです。ただ15年前のコメントに一言付け加えて。自らを限らず取り組め、『チャンスは後一回』と。

 我が家の本棚はまだ片付いていません。