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2026年10月 1日 (木)

【第959回】「知る楽しさ」K. Y. (英語)

 今年の東京大学の英語入試問題で、ハッとさせられる言葉に出会いました。精神分析で有名なフロイトについての文章です。その中に、こんな一節がありました。

It is our desire for knowledge that animates us; and it is our passion for ignorance about ourselves that is so time-consuming, so life-consuming.

「私たちが生気を得るのは『知識への欲求』によってであり、そして、非常に時間がかかり、生命を消費させるのは『自分自身について知ろうとしないことへの熱情』なのである」

 少し難しく聞こえますが、要するにフロイトは「知りたいという好奇心こそが、人間の心をワクワクさせ、人生を生き生きとさせる」と言っているのです。
 この言葉を読んだとき、以前、長野の上高地に行ったときのことを思い出しました。
 上高地で山登りをした際、「なぜ白樺が多いのか」「なぜ水がこんなに澄んでいるのか」と疑問を持ち、調べてみたことがあります。知識がない状態なら「きれいだな〜」と眺めて終わりにしてしまう景色でした。しかし、その理由を知ったとき、ただの綺麗な風景が自然を生き抜く力強いストーリーとして迫ってきました。「知る」ことで世界の解像度が上がり、心が活気づいた瞬間でした。
 何かを知ることで世界の解像度が上がり、心が活気づく。これこそが、人間が本来持っている「知る楽しさ」なのだと思います。
 でも、フロイトは人間の少し厄介な本性についても触れています。
 私たちは、自分の弱さなど不都合な現実には「知りたくない」とブレーキをかけ、言い訳に莫大なエネルギーを使いがちということです。でも、そのエネルギーを少しだけ自分の内面への好奇心に向けられたら、世界はもっと広がります。
 学びとは、テストで点を取るためだけのものではありません。知ることで世界が広がり、日常が豊かになる。そう考えると、やっぱり死ぬまで勉強だなと思いました。

20261001