【第563回】 My favorite book藤川 洋子 (英語)
皆さんは普段から本を読みますか。
私は幼いころから漫画が大好きで、本は気が向いた時にのみ読んでいたのですが、そんな学生の頃の私にも一つ一つのエピソードが短く、とても読みやすいものがあったので紹介します。
「ミラノ 朝のバールで」(宮本映子・文藝春秋刊)
イタリアはミラノに住む、日本人女性のエッセイです。
家族のこと、明るいイタリアの人たち、食べ物など現地での日常が色鮮やかに、そして少し切なく描かれています。
中でも「人生はブリオッシュだよ。ああ、美味しかった、ごちそうさま。と言ってあっという間に食べ終わってしまうブリオッシュだ。」
というフレーズがとても印象的です。
ブリオッシュというのはバターとお砂糖をたくさん使って焼いた、ころんとしたパンのようなお菓子です。バターが多いので口に入れるとふわっと口の中で溶けていくのが特徴で、イタリアやフランスなどでミルクをたっぷり加えたエスプレッソのお供に好まれています。
「人生、ブリオッシュだと思えば腹の立つこと、憎らしいこと、この世のあらゆる世俗的な事柄が、不思議に大したことでもないように思えてくる。」
というイタリア人の素敵な人生観に触れられる一冊です。
イタリアの風景を撮った写真集に魅せられ、大学中退後すぐ単身で渡伊した著者が綴る文章は、これから何か新しいことを始めようとしている人の心にもあたたかく沁みるのではないかと思います。