【第474回】 古い色紙T. Y. (英語)
今年遊学館高校に戻ってきました。新任式で挨拶させていただきましたが、実は「新任」ではなく「再任」です。
十数年前、私はこの遊学館高校で教員としてのキャリアをスタートさせました。しかしそのときはそれほど教員という職業に思い入れがあったわけではなく、もちろん経験もなく、右往左往しながらの毎日。そんな私を周りの先生方や明るい生徒たちが助けてくれましたが、悩みの種のクラスが一つ。「授業中話を聞いてくれない…」毎回ため息をつきながら授業から戻ってきたものです。
ある日、その年に結婚した私に同じ職員室の先生方がお祝いメッセージを書いた色紙を下さいました。そのプレゼント自体がpleasant surpriseだったのですが、真ん中に書いてあるイラストとメッセージを見て目を見張りました。「話を聞いてくれない」と思っていたクラスの中でも特によく注意をしていた女子生徒二人からのものでした。
「先生の授業はとても丁寧で生徒たちに優しくふるまっていただきありがとうございます」
そんなふうに思ってくれてたのか。じわーっと心が暖かくなりました。退職してからも、町で「先生、覚えてる?」と満面の笑みで声をかけてくれたのはそのクラスでよく注意した別の男子生徒。授業中の様子だけでは分からないみんなの顔。あの1年間は生徒のみんなに成長させてもらった気がします。
色紙は今も大切に部屋に飾ってあります。出産を経てもう一度仕事を始めようとしたとき、その色紙の思い出がなかったらきっともう「教員」という職業には就いていなかったでしょう。久しぶりに遊学館に戻ってきて、以前よりももっと元気で明るい生徒たちの声が響いていると感じます。またここでいろんな生徒たちとの出会いがある。そう思うと心の底からわくわくしています。