【第698回】 「HANABI」中村 裕行 (地歴・公民)
私はこの夏、ミスチル(Mr.Children)の「HANABI」という曲にハマってしまった。ほとんど聴いたことのないミスチルの曲(2008年発売らしい)がなぜ耳に入ってきたのかは思い出せないものの、詞も曲も心に染み入り、以後何回、何十回となく聴いている。恋愛をテーマにしたような歌詞だが、“誰も皆 問題を抱えている だけど素敵な明日を願っている”など、人生のツボを押さえたようなフレーズが所々に散りばめられている。
さらに心動かされたのは、YouTubeのコメント欄に「この曲を聴いて救急救命士になろうと思った」とか、「コロナ禍で大変な中、看護師として頑張る」とか、「私は弁護士を目指しているので、“命を守る人”を守る人になる」などの声が溢れていたことである。(この曲は、救急救命士のチームを主人公としたテレビドラマのテーマ曲だったそうである。また、この文章が当初掲載されるはずだった一週前の9月9日は“救急の日”というのも、何かの巡り合わせだったのか…)
かくなる私も先生(教員)になろうと思ったのは、当時盛んに放映されていた学園ドラマによる影響が大きい。以後、この仕事を続けて今年37年目となった。未だに教師と書けない未熟者の私だが、「倫理」の授業で教えるサルトルの言葉“実存は本質に先立つ”といったところであろうか。私は本質に迫れないまま終わってしまいそうだが、皆さんにはぜひ本質・本物を目指してほしい。
就職に至る道筋は人それぞれで、私が携わる就職指導を通しても、生徒が様々な仕事を選んでいく様子はまさに様々である。就職に限らず、先のオリンピックやパラリンピックでも選手が競技と出会うきっかけは人それぞれで、中には“運動音痴を自認する選手が金メダル!”、“50歳女性がパラリンピック初出場で金メダル!”など、奇跡に近いようなニュースもあった。それこそオリンピックやパラリンピックの選手達は、順風満帆ではなく波瀾万丈の人生を歩んでいるのだろう。何が人を動かすことになるかはわからないゆえ、人生は面白い。たとえ事が上手く運ばなくても、「HANABI」の歌詞でくり返される、“もう一回 もう一回”と手を伸ばす気持ちで困難に立ち向かっていきたい。