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2019年11月14日 (木)

【第603回】 「闘争と逃走」K. C. (理科)

 大勢の前で発表をするとき、緊張して、たくさんの手汗をかいたり心臓がドキドキしたりします。これは動物がもつ本能で、闘争・逃走反応(Fight or Flight response)が起こるからです。
 この反応には自律神経の交感神経が関わっています。自律神経は自分の意思とは無関係に働く神経系で、消化管運動や心臓の拍動の調節などを行なってくれています。交感神経は激しい活動や興奮しているとき、副交感神経は眠たいときやリラックスしているときに働きます。
 動物は危機的状況において、闘うか逃げるかという方法で生き延びてきたと言われています。
 たとえば一頭のライオンが敵意を持った100頭のライオンに囲まれているとします。この状況で一頭のライオンは100頭のライオンと闘うか逃げるかの選択を本能的に行います。これは最初に書いた「大勢の前で発表する」という状況と同じ状況で、逃げられず、誰にも頼らずに一人で対処しなければならないです。このとき、殺されるような生命的危機ではないですが、同じように闘争・逃走反応が起きるのです。
 交感神経が働くと、血管が収縮し血圧が上がり身体の中の血の巡りをよくし、エネルギーを作るために多くの酸素が必要となるため気管支を広げて呼吸数をあげて酸素を取り込みます。そのため心臓がドキドキします。また、生きるか死ぬかを迫られている状況では消化活動にエネルギーを使っている場合ではないため、そのエネルギーは筋肉を使うことに回すします。顔がこわばったり手足が震えたりするのはそのせいです。手汗が出るのは何かを掴んだときに滑らないようにするためなど、緊張したときの反応はさまざまありますがそれら全てには理由があるといわれています。
 この反応は緊張したとき、非常事態のときになるといわれていますが、みなさんは何度も経験したことがあると思います。もし、ずっと緊張状態が続いて消化できない眠れないなど生活や健康に影響が出たときは、静かな音楽を聴いたりお風呂に浸かってみたりなど、リラックスする時間を作ってみてください。ずっと闘っていると疲れちゃいますからね。