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2011年12月29日 (木)

【第214回】 “I’m doing what I can.”T. K. (英語)

 すさまじい自然の力を見せつけられた 2011 年も、もうすぐ終わろうとしています。東日本大震災では、「未曾有の」とか、「想定外の」、あるいは「今まで経験したことのない」という言い方があふれていました。大自然の威力は、人間の一生には及びもしない大きさなのだ、と改めて思い知らされています。

 年が明ければ、三年生のみなさんは、あっという間に卒業式を迎えますね。新しい旅立ちが、希望にかなった、一歩でも自分の夢の実現に近づけるものであるよう願うばかりです。

 みなさんが学んだ英語のテキストの中に、いろいろな人の生涯と夢の実現を語った Lesson がありました。 ノーベル賞受賞スピーチで、”Mottainai”という日本語を世界に広め、この秋9月25日に亡くなった、ワンガリ・マータイについて記事もその一つで、彼女の生き方からも私たちの生きるヒントを見つけることができます。

 マータイさんは、開発で荒廃したケニアの大地に心を痛め、自分にできることは何か、と考えた末に7本の木を植えました。これが、Green Belt Movement と呼ばれる植樹運動の始まりとなり、彼女の行動と熱意に共鳴し、賛同した人たちが増えていき、ついにはアフリカ全土に広まって「緑の帯」をアフリカに作っていったのです。

 マータイさんの活動は政治の分野にも進み、71歳で亡くなったことを伝える新聞記事には、「ケニアでは大統領よりも影響力があった。」とありました。また、マータイという姓は、結婚していた時の夫の姓Mathaiに、aを加えてMaathaiとし、自分独自の姓にしたというエピソードもあり、ケニア女性の自立を願った彼女らしい一面をうかがうことができます。

 マータイさんは、自分ができないことを探すのではなく、”I’m doing what I can.”といって、自分にできることを、たとえ一歩ずつでも着実にやっていく、という姿勢で積み重ねていったのだと思います。

 四月から、新しい世界へと踏み出していく皆さん、”I’m doing what I can.”を胸に、どうか皆さんの旅立ちが、希望にそったものとなりますように。

2011年2月 2日 (水)

【第169回】児童書(Fantasy)のすすめT. K. (英語)

  ハリー・ポッターシリーズの最終章の映画が公開され、後編が待ち遠しいこの頃です。
私は、生徒から「先生のおすすめの本は?」と聞かれると、このハリー・ポッターにも影響を与えているとされる、ル・グヴィン作の「ゲド戦記」をすすめています。

  ハリー・ポッターは、確かに読んで本当に面白いのですが、ずっと手元に置いて何度も読み返すというよりも、どちらかと言うと、お楽しみの要素が強いです。
一方、同じ児童書(Fantasy)でも、「ゲド戦記」や、J・J・トールキンの「指輪物語」、ミハエル・エンデの「果てしない物語」、C・S・ルイスの「ナルニア国物語」などは、
一度出会って惹かれたら、とても長いおつきあいになる可能性が大きいです。
それは、どの本も独自の世界を持ち、読み手の人生観や世界観に応じた展開をしていくので、読み返すたびに異なる面が輝きを見せてくれるからです。

  「ゲド戦記」は、5年ほど前に、魔法使いゲドの弟子である、
アレンを中心とした映画が上映されたので、本の名前は聞いたことがあると思います。
全6巻あり、そのうち最初の3巻までで、ゲドの魔法使いとしての生涯が完結しています。
もし興味がわいたら、手に取ってもらえると嬉しく思います。

  この作品の中で、ゲドは、少年期に自分の能力に目覚め、魔法を学び、その力を大いに発揮していくのですが、絶えずつきまとう影におびやかされ、追いつめられて、最後にその正体を知った時、自分とは何者なのかを認識する、というのが第1巻です。
ここで作者は、自らが創り出したアースシーという世界で、海と山の豊かさ、人間の賢さと愚かさ、太古からの生き物である竜とのつきあい方、さらに「言葉」そのもののもつ計り知れない力、などを飽きさせず語っています。
ゲドが「大賢人」に到達するまで駆け抜ける様子は、「児童」でなくとも、年齢を問わず引き込まれると思います。
いつでも手にして、その世界に入り込んだ時が、ゲドと行動を共にする適齢期なのだと思います。

  もう一冊紹介したいのは、やさしく読めて、深い味わいのある、佐野洋子の「百万回生きた猫」で、これは絵本なのですが、大人になっても読んでもらいたい作品です。
みなさんは、魅力的な猫の姿を、きっとどこかで目にしたことがあると思います。
この猫を通して作者は、人が「本当に生きること」の意味を示唆しています。

  「児童書(Fantasy)」には、不思議な万華鏡のような世界が潜んでおり、是非一度「不思議の国のアリス」のように、rabbit hole ( ウサギの穴 ) に入り込んでみて下さい。