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2013年10月10日 (木)

【第301回】 初心に戻る山本 雅弘 (保健体育)

 プロ野球のシーズンも終わりに近づき、すばらしい成績を収めた選手がスポーツ新聞をにぎわしている。王貞治選手が記録した年間55本をバレンティン選手が現在60本に記録を塗り替えている。また、田中将大選手が開幕24連勝の大記録を、そして、アメリカ大リーグで活躍しているダルビッシュ選手が最多奪三振の記録を打ち立てている。
 遊学館はこの田中将大投手と岡山国民体育大会の決勝で対戦している。また、ダルビッシュ選手とも甲子園の2回戦で対戦している。結果は残念ながら両試合とも負けているが、超一流の選手と対戦して私自身学ぶことがたくさんあった。

 特に、ダルビッシュ選手と対戦したとき感じたことを述べていきたい。

 その年の優勝候補は東北高校があげられていた。投手のダルビッシュは投げる球は速いし、変化球も鋭い、ダルビッシュ以外の選手も身体能力に優れ守りも攻撃も隙のない超高校級のチームだった。私は東北高校と対戦する前にビデオを観て徹底的に研究をした。各打者の打てるコース、打てないコースの分析。バントやエンドラン等の作戦の取り方。ダルビッシュ投手の癖など細かく研究・分析した結果、対等に闘っても勝てない相手であることは確かである。しかし、ダルビッシュ投手はフィールディングが適当でランナーに対する注意力もないようにみえ、自分の能力にうぬぼれた選手のように感じたので「なんとか一泡吹かせてやろう」と思って試合に挑んだ。

 結果は0―4の完敗であった。

 初回の四球を選んだ選手が牽制でタッチアウト。4回の先頭打者の2塁打の選手も絶妙なタイミングの牽制でタッチアウト。このとき選手にはダルビッシュ投手の攻略方法として「スキがあれば積極的に走ろう」と指示をしていたためだろう。打撃でも、「ストレートを狙い逆方向に強い打球を打て」と指示していたが、1球ごとにダルビッシュ選手が守備位置の指示をしたところに痛烈な打球が飛んでいく。打者としても、いつもは打たないのに3本のヒットを打たれ、1時間53分で試合が終了した。

 試合の後、野球関係者から「ダルビッシュ選手があそこまで真剣に投げたのを観たことがない、今年一番の投球内容だった。あれではプロのチームでも得点するのが難しいよ」という慰めをされた。高校生でも一流選手の能力は想像を超えることを痛感させられた。
どんな万全な準備をしていてもそれまでの経験した中での準備であって、自分の経験以上の準備をしていかなければいけないのが甲子園なのである。本当に高いレベルで考えていかないと準備が完全にできたといえないことを学んだ。
 「これくらいで大丈夫」そう思ったときが負ける方向に傾いている。考えられる限り準備をしていくことが指導者にとって最大の仕事なのである。

 今年の夏と秋の大会で悔しい敗戦を味わった。 「ダルビッシュ選手から学んだことを十分に生かされていたか・・?」自問自答してみると、十分でなかった反省で心が痛む。
初心に戻って選手と共に大きな目標に向かっていきたい。