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2009年5月27日 (水)

【第87回】前に進むための満足S. J. (地歴・公民)

 先日、テレビ番組を見ていたら、イチロー選手が次のような発言をしていました。

「何か課題や目標を定めて、達成したら大いに満足をするべき。そうでないと人間は気持ちがもたない。満足するのも自己評価。僕はむしろ満足人間です。満足の先には必ず次の満足に向かう課題が現れるもの。その時は、また全力でそれを目指せばいい。

 イチロー選手といえば、すばらしい結果を出しても決して満足しない人という印象が強かったので、意外でした。でも、彼もやっぱり人間。自分で自分のことをほめてあげてたんだなぁ、と思いました。そういえば、最近よくテレビに出ている脳を研究している博士も、

「できないことができるようになったとか、知識を得て疑問が解消したとか、どんな小さなことでもいいから喜びを感じる経験を積み重ねることが脳を活性化させる。

と言っていました。ただ、2人の発言で重要なのは、あくまでも

「次に進むために満足する。」

ということ。満足したところで、立ち止まっていては意味がないのです。
イチロー選手は次のようにも言っていました。

「自分の信じるやり方を貫くには、自己評価が一番厳しくなければならない。自分の可能性を広げるには、自分で自分を高いレベルで妥協なく教育するしかない。

博士も言っています。

「やる前は無理かもしれないと思っていたけれど、やったらできた」という意外性ほど、脳を活性化させるものはない。」

そう、最初は簡単なことでもいいから自分をほめてあげる。でも、超えるべきハードルが低すぎても、脳は喜びません。次に超えるべきハードルを高くしていくことが、大きなゴールにつながっているのです。

そのために必要なのが、師の力です。授業なら教科担任、部活動なら顧問の先生方の話をしっかりと聞いて理解する。ハードルを超えるための技術をしっかりと伝授してもらうことです。勉強もスポーツも上手になることが楽しむ第一条件。あるスポーツ選手が言っていました。

「遊びも、勉強も、スポーツも、仕事も、真剣にやるから面白い。小さいころ、鬼ごっこに夢中になったでしょ。あれは絶対に鬼になりたくないって真剣にやってたから。そこから、よけ方やつかまらない逃げ方を学んでいく。真剣にやるから上手くなる。上手くなるから面白い。何事も楽しみたかったら上手になればいい。

日々の授業で、できないと思っていた問題が解けた、ノートをしっかりととれた、恥ずかしがらずに質問できたなど、まずは小さなことでもいいから、脳を喜ばせてあげましょう。部活動では、昨日できなかった技が出来たとき、昨日5点しか取れなかった相手に6点取れたとき(たった1点と言わずに!)、仲間とともに気持ちの入った練習が出来たとき、自分をほめてあげればいい。そして、先生がたのアドバイスを聞いて、勉強も、スポーツも、芸術も、清掃も上手な方法を学んでいく。

 そして、次の日また、昨日の自分を越えたときに満足し、次の課題を見つける。あるいは、師が超えるべき課題を与えてくれるでしょう。そうやって自分を高めていき、2年後の自分の可能性を広めていって欲しいと思います。

2009年5月20日 (水)

【第86回】新校舎嶋田 司 (数学)

 ゴールデンウィーク前後になると、今年3月卒業したばかりの生徒たちが学校に遊びにやってくる。今年の場合は、近況報告というよりも、新校舎の見学といったところか。

昨年度、彼らは新校舎の工事のため、狭い校舎での学校生活を送り、自分たちが卒業すると同時に新校舎ができあがるということで、事ある度に恨み節を聞かされた。実際に、可哀想な思いをさせたと思っている。

 新校舎を見学し、さぞや文句を言われると覚悟していたが、案外そうでもないようである。口では「新校舎いいなぁ」とは言うが、羨ましくてしかたがないという感じではない。高校生活は、校舎が新しいか古いかでなく、多くの友人と時間・場所を共有し、3年間ともに過ごしてきたこと自体が何よりも大切だということだろう。そう思うと、シンボル的な存在であった円筒校舎が取り壊されたことは、多くの卒業生の方が寂しい思いをされていると思うと同時に、第1学館にも多くの卒業生の思い出が詰まっていることを忘れず、大切にしていきたいと思う。

 さて、新校舎で高校生活を送る生徒諸君、新校舎を思い出深いものにするのは、君たち自身である。勉強・部活動に励み、様々な活動を通して、かけがえのない時間を多くの友人と過ごしてほしい。

2009年5月13日 (水)

【第85回】Not for today, but for tomorrow牛腸 尋史 (英語)

Viewimg0 朝6時20分、金沢駅では、登校する高校生たちの姿をたくさん見ることができる。その中には、もちろん遊学館高校の生徒もいる。バトントワリング部、サッカー部、女子バレーボール部など、運動部の生徒が電車を降りて自転車やバスで学校に向かおうとしている。

そして、6時44分に金沢駅を出発し幸町に向かうバスには、運動部員だけでなく、ゼロ限目(毎朝8時に始まる特別進学コースの授業)を受ける生徒も乗っている。生徒たちは、7時前には学校に到着し、それぞれの目標に向けた地道な努力に取りかかるのだ。

 6時50分、女子駅伝競走部はすでに学校周辺を走り、サッカー部の朝練習が始まっている。7時にはバトントワリング部と女子バレー部の生徒が部室の鍵をもらうために、職員室にやってくる。7時過ぎには男子卓球部の練習が始まり、女子卓球部が特別活動棟前を掃除する姿も見られる。この姿は、1年間、春夏秋冬を通して変わることはない。

 午後3時30分、終礼が終わると図書室と新しくできた進路指導室のガギを開けることが今年の4月から私の日課になった。平日は夜8時まで、土曜日は夕方5時まで開放して学習室として利用できるようにしている。終礼後すぐにやっている生徒もいれば、7限目や補習を終えて5時過ぎにやって来る生徒、そして部活動を終えて夜7時にやってくる生徒もいる。それぞれが自分の時間を工夫しながら勉強に取り組んでいる。そして、4月から現在まで、8時前に図書室の電気が消える日は1日もない。

 8時を過ぎても、卓球場からはカーテン越しに明かりがこぼれ、男子卓球部の生徒たちが練習する声がまだ聞こえている。部活動ではチャンピオンを目指し、勉強では進路実現を目標に、生徒たちはそれぞれが自分のステージで必死に戦っている。成果は、大会や受験で結果として示される日が必ずやってくる。しかし、その結果は時として、それぞれにとって不本意な時もあるはずだ。でも、彼らのひた向きな努力は、その先に続く人生の中で、きっと大きな財産となり、様々なかたちで成果となって活かされる場が必ずあると確信している。

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