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2009年2月 4日 (水)

【第74回】高校生の君たちへ あえて勉強の話をしよう(その2)渡辺 祐徳 (英語)

◆大統領が力をくれた!◆
 "My fellow citizens."
 この一声で、アメリカ第44代大統領オバマ氏の就任演説が始まった。アメリカ史上初の黒人大統領誕生の瞬間だ。オバマ氏本人の肉声を英語のままで聞いてみた。国民一人一人の責任ある行動と国の再生を訴える、新大統領の力強くも落ち着いた言葉に、確実な時代の変化を感じた。また涙を流しながら聞いている人たちの多いことに、その期待の大きさを感じた。

 ○○年前、高校受験を目の前に控えた年にも、アメリカのカーター新大統領の就任演説の様子が放送された。当時はまだまだ未熟な英語力しかなかったから、ほとんど聞き取れず、大統領の高めの声だけが頭に残った。「スピーチや映画、歌などの英語を聞いて理解できるようになりたい。でも本当にできるようになるのか?」
 やる気と不安が入り交じっていたが、「できるようになりたい」という気持ちを強く持てたのは、もしかすると大統領が背中を押してくれたのかも知れない。

◆夢中で英語を求めた!◆
 私が中高生の時は、外国人の英語に触れる機会はほとんどなかった。
学校の授業はすべて日本人の先生であり、ビデオもない時代で、家で好きな洋画を英語で楽しむこともできなかった。それでも、ラジオの英語講座は大いに活用した。ラジオを決まった時間に聴くだけで、授業料はかからないし、テキスト代は一ヶ月数百だけ。会話、歌、映画の台詞など、さまざまな材料が盛り込まれていて、非常に楽しかった。毎回、次の放送が楽しみだった。

 時々映画館まで、洋画を見に行った。
私はなんと、必ずテープレコーダーを映画館に持ち込んでいた。映画の台詞を何度でも聞いて、たくさんの表現を覚えたかったのだ。その頃のテープレコーダーは、今の携帯型音楽プレーヤーのように小さくはなく、肩からかつぎ、片手にマイクを持ってじっとしてなければならなかった。いつ映画館の人に呼び止められるかとハラハラしながらも録った映画の台詞は今でもほとんど覚えている。(よい子はまねをしてはいけません。)

◆進路を考えたとき◆
 高校2年生のとき、学校で進路希望の調査が行われた。
当然英語の道を選ぶだろうと親も思っていたようだが、実は英語の他に進路として考えていた道があった。それは音楽だった。高校に入って吹奏楽部に入り、楽器を演奏するこの楽しさにすっかりのめり込み、一時は音大進学まで考えた。だが親に相談したときには、即却下された。そんな甘い考えで生きていけると思うのかということだった。もっともだと思った。私が目指そうとしていたのは、日本に数えるほどしかいないプロの演奏家である。仮に音大を卒業しても、まずなれる可能性の低い狭き道である。親は正しかったし、自分でも納得できた。

 そんな浮気心から元のさやに戻るように、また英語の道を目指すこととなった。だが、もう迷いはなかった。むしろ今までよりも強く、進学の意欲が高まっていた。「大学に入ったら絶対に留学をして、英語の達人になる!」

 教室の壁に、全国の大学ランキング表が貼ってあった。「日本の外国語学部で最高のランクはどこだ?」

 真っ先に目に飛び込んできたのは、関東地方にあるA大学だった。関西地方のB大学は、偏差値的には入りやすいが、公費留学制度が日本一充実している。この2つの大学を目標の中心とし、受験勉強に取り組んだ。

 今回もとりとめのない話になったが、決して自分ががんばったということをいいたいわけではない。一生懸命に何かに専念すると、そこから将来が開けてくることもある。自分が打ち込める何かを、君たちにも持ってもらいたい。その参考になればと思うばかりである。