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2007年9月12日 (水)

【第5回】GREEN IN YUGAKKAN牛腸 尋史 (英語)

 遊学館高校の敷地は木々に溢れている。

 桜やザクロ、銀杏、金木犀、藤、そして松など、実に様々である。初めて高校を訪問された方からよく伺う声に、

「街中にあって緑が豊かな環境ですね。」

というものもある。

 春には生徒門の脇で桜たちが薄桃色の花で新入生を迎え、秋にはバスケットコート前から第2学館に向かうたびに、金木犀が甘い香りが漂わせている。狭い校舎の中にいても、様々な木々が豊かな彩りや香りで私たちに季節の移り変わりを教えてくれる。

 そう言った木々の中でも、敷地中央に泰然と立つ榎(えのき)は、やはり遊学館高校のシンボルではないかと思う。風が通り抜けるたびに枝葉をサワサワと鳴らす様子からは、自然の雄大さと包容力を感じる時もある。

 100年以上にわたって金城学園の生徒達を見守ってきた。

 一体何百、いや何千人の高校生がこの木の下で昼食を食べ、語らってきたのだろうか。もし、榎と話す言葉があれば、どんな話しを私に聞かせてくれるだろうか。

 100年前に瞳を輝かせ金城遊学館の門をくぐる女学生の姿。戦時中に校庭で農作物を栽培しながら汗を流す女学生たち。

 そして、共学になった遊学館高校で過ごす現在の生徒達のことは、どんな風に話してくれるだろか。尽きることのない思い出をいつまでも話してくれることだろう。そんなことを想像するだけでも、楽しくなってくる。

 遊学館高校が緑豊かでいられるのは、「本多の森」と「犀川」の役割が大きいのでないかと思うことが時々ある。遊学館高校の木々は、豊かな本多の森と地中深く根を結び、犀星が「美しき川」と謳った犀川から水を受けて伸びやかに育っているのではないかと。

 それはまるで、彼らが金沢の豊かな自然と遊学館高校を結びつけているかに思える。毎日何気なく過ごしている校舎のあちこちで、季節の移ろいと共に姿を変えながら、草木たちは今日も遊学館高校を静かに見守っている。

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遊学庭の榎 その1
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遊学庭の榎 その2